どっちがエライか
今もやっているのかどうか知らないが、かつて「こども電話相談室」という人気ラジオ番組があった。
どんなことでも子供が疑問に思うことを訊いて、有識者が子供にもわかるようにやさしく回答する。
その子供らの質問には、大人には思いつかない発想の面白さあって、大人にも人気があった。わしもときどきその時間になるとスイッチを入れた。
あるとき、「神様と仏様はどちらがエライのですか?」という質問をした子がいた。
そんなことを訊かれたら大人は困るよネ。わしだったら思わず目が泳いじゃうよ。
で、ラジオはどんなふうに答えるのだろう、と耳をそばだてた。
誰が回答者だったか忘れたが、その解答はちょっと面白かった。で、今でも憶えてる。
彼はおよそ次のように答えた。
「かつて三波春夫という有名な歌手がいてね、『お客様は神様です』とよく言っていた。その歌手のお客様はお年寄りが多かったので、つぎつぎに亡くなった。亡くなったら仏様になると言うでしょう。そう、神様は死んで仏様になった。つまり仏様の方がエライと私は思うね」
「神様と仏様はどちらが上か」なんて、人間に分かるわけはない。分かるとすればそれこそ神様だけだ。いや仏様か? ともあれこのラジオの回答者は、いわばトンチでうまく躱(かわ)したわけだ。
このあいだの平昌冬季オリンピックを見た子供が、もし、
「スピードスケートの高木姉妹は、どっちがエライの?」と訊いてきたら、この回答者はどう答えるだろう。
周知のように、姉の菜那は女子団体パシュートとマススタートという種目でで金メダルを2個取った。
妹の美帆は、女子1000mで銅メダル、1500mで銀メダル、女子団体パシュートで金メダルを獲得している。
ふたりの違いは、金2つ取ったか、金銀銅で3つ取ったかだ。
メダルの数からいえばもちろん妹のほうがエライ。
しかし、テレビの「あっぱれ!/喝ッ!」判定で知られる野球評論家の張本勲氏が主張するように、「スポーツは1位と2位の間にはウンデーの差がある」という考えをとるなら、姉のほうに軍配が上がる。
で、結局、どっちがエライの?
ところで、
「アメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩将軍は、どっちがエライのですか?」
って子供に訊かれたら、あんたはどう答える?
わしならこう答えるね。
「近く行われるという2人のトップ会談の結果しだいだ」
「どっちもクソだ!」