痛い
わが女房はときどき奇妙な病気にかかる。
朝起きると、かならず身体のどこかが痛い、と訴えるのだ。
「どこかが痛い・・・」なんてアイマイな言い方をしているのは、どこそこが痛いとはっきり言えないからである。
そこがじつはこの病気(いちおう病気ということにしておく)の奇妙なところであり、悩ましいところなのだ。具体的にいうと、毎朝痛いところが違う。
たとえば、ある朝起きたら頭が痛い、次の日の朝は首が痛い、その次の朝は胃が痛い、その次の日は横っ腹が痛い、背中が痛い、みぞおちが痛い、股関節が痛い・・・等々と、痛いところを替えながら、毎日続く。
わしは「日替わりイタイイタイ病」と名付けた。そうとでも言う以外にないではないか。
最初は心配だったが、そのうちわしも慣れてきた。
ある朝、胸が痛いと訴えるので、
「胸が痛い? 悩んでることでもあるの? 恋わずらいか?」
と聞いたら、バカ、とこわい顔してにらまれた。
もしそこで彼女がギョッとした顔をしたり、変にムキになって否定したりしたら、こんどはわしが頭が痛い・・・ということになるのだろう。
こういうときの「頭が痛い」は、もちろん肉体的な痛みではない。
同じように「腹」も、肉体的に痛くなくても「痛い」と言うことがある。たとえば、「痛くもない腹を探られて迷惑だ」とか。
こういうことを言うのは、だいたいは腹の色が暗色系の人間だ。
腹黒い、というのがその典型だろう。中には灰色のやつもいるし、白と見せかけて実は黒・・・というひと手間かけたのもいる。
職種でいえば政治家や官僚に多い。
自分の腹は痛くないと大声で言うのは、じっさいは痛いところがあるからだろう。
最近もどっかの中央官庁の局長にそういうのがいた。痛くないと言わざるをえないホントは痛い腹を探られて、国会答弁でアブラ汗を流したあげく、栄転というご褒美にもらって国税庁長官になったが、結局、辞めざるをえなかった。ご苦労なことだ。
こういうのとは全く別のところで「痛い」というケースもある。
わしが若いころはあまりそういう使い方をしなかったが、最近よく耳にするのが「痛い女」。書く場合には「イタイ女」とカタカナ書きにすることが多いようだ。
たとえば、20代もそろそろ半ばになろうかという年齢なのに、「うちの課長ってふしぎちゃんなの。マジ卍(まんじ)!」といったJK言葉を使って若さをアピールする女とか、(わしもいま “JK言葉” なんて若者ことばを使ってバカさをアピールしたよ)
なにかというと自分や家族の自慢をする女、元気イッパイだけどなにか勘違いをしている女、還暦どころか古希さえ超えていそうなのに、胸元を大きくあけてザラザラした肌を露出させている女とか・・・。
ひと言でいえば、服装や言動が年齢や状況からいってひどく場違いで、見るに堪えない女・・・ということになろうか。
そういう “イタイ女” に比べれば、わが女房どのの “日替わりイタイイタイ女” はまだましかもしれない。
・・・というか、毎日イタイイタイと訴えるのは、年齢と状況を考えれば “ふしぎちゃん” でも何でもなく、まさにぴったりそのままの症状である、といえるだろう。
ヤベー、なんだか語るに落ちる・・・って感じになっちゃったな。
(いけねぇ、また若者ことばを使っちゃったよ)