飼い猫にあやかりたい

 新聞の読者欄に投稿された文章に思わず笑ってしまった。
 最近の投稿なので、目にして記憶にある方もあるかもしれないが、およそこんな内容である。
 
 投稿者は中年の主婦。
 家で猫を飼っている。フサフサとした毛並みが自慢のペルシャ猫で、猫用シャンプーも最高級品を張りこんで使っている。
 
 そのお安くない猫用シャンプーが、最近なぜか減り方が激しい。洗い方を特に念入りにし始めた訳ではない。おかしいなあと思っていた。
 
 ところがある朝、たまたま夫の頭が鼻先を通過したとき、ある匂いがした。猫用シャンプーと同じ匂いだった。
 
 最初は、夫がうっかり間違えたのかと思った。猫用シャンプーも浴室に置いてあるからだ。注意しておかなければ・・・と思いかけて、あッ、と小さく声をあげた。
 
 夫は初老にさしかかっている。当ぜん頭の毛が薄くなり、額の面積は広くなった。妻にはどうでもいいことに思えるが、当人は気になるらしい。洗面台の鏡のまえにいる時間が長くなったような気がする。
 
 ひょっとすると夫は・・・。

 ちょっと冷静に考えれば、効果のほどは100パーセント期待できない。そんなことは小学生にでもわかる。
 にもかかわらず、家族に黙ってひっそりと使っているところが、何となくアワレだ。いじらしくもある。
 で、なかなか夫に注意できないでいる。
 ・・・という話。
 
 たしかに人間はいくら年をとっても、傷つくことを言われるとやっぱり傷つくんだよね。
 
 わし自身が若いときそう思ってたから言うんだけど、年寄りは耳や目や足腰と同様に感情も衰える、つまり心の動きがにぶる。だから嫌味や皮肉をいわれても、少々のことじゃこたえんだろう・・・と思っているむきが、若い人にはけっこうあるように思う。
 
 でもそれはちがう。じつは感情だけは年をとっても衰えないの。
 むしろ身体機能が弱って、周辺に迷惑をかけてるかも・・・という自覚があるからいっそう、周りの人の反応に敏感になっているところがある。
 
 もっとも、感情自体はにぶっていなくても、世の荒波にもまれてきたぶん、内心の痛みを表に出さないようにやり過ごすスベは身につけているかもしれない。
 ま、これだって、ある意味アワレだけどねぇ。
 

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