知らなかった介護インフラ
ことしの3月中旬、わしは、空から舞い降りた気まぐれな魔女の爪に引っかけられたように、とつぜん脳梗塞に襲われ、救急車で病院に搬送された。
そのためこのブログも、予告なく1ヵ月ほど穴をあけたし、復帰後も、何回にもわたって魔女の爪痕に引っ掻きまわされた話を書いた。
さて、いま “魔女の爪痕” などと、ケバケバしい言葉を軽薄に使ったけれど、あのときのことを今から振り返ってみると、脳梗塞はそう悪いことばかり運んできた訳でもない。思いがけず良いコトももしてくれた。”天使の贈り物” というほでもないけどね。
実はこういうことがあった。
病院に運び込まれたとき、救急車にカミさんも一緒に乗せられた。
搬入される側にしてみれば、コトが起きたときの状況があるていど分かった方がいいので、ふつう、そばにいた家族などを一緒に連れて行くらしい。
じっさい、わしの口がろれつが回らなくてなって、まともにしゃべれないので、病院ではカミさんから事情を訊いた。ところがカミさんの受け答えも、ちょっとまともではなかったらしい。そばにいたのなら、普通なら当然答えられることにもマゴマゴする応答で、記憶がほとんど飛んでいる。
これだのけ記憶障害が元気であれば、日常、生活する上でソートー困ると思われる。ところが亭主が脳梗塞で入院すると、この家には、この80歳少し前の老女がひとりになってしまうらしい。典型的な高齢者生活困難所帯の見本だ。
カミさんと話を交わした看護師は、そのことがピンときて、病院に勤めるソーシャル・ワーカーに連絡した。
ソーシャル・ワーカーはカミさんと会って話をしてみて、すぐさま町の地域包括支援センターに連絡した。翌日の朝には、包括支援センターから職員の人がわが家にやってきて、カミさんと接触した。そして、生活に問題や支障が生じないよう、いくつかの支援措置を講じてくれたという。
その後も、わしは入院中で何も知らなかったが、介護サービスが受けられるように手続きがとられ、カミさんは「要介護1」に認定された。軽い方からいっても3番目に重い認定だ。
さらに、今回のわしの発病で医療費もかかることになるし、わが家の経済問題に支障が出る心配はないかと、町の社会福祉協議会にも連絡がいって、協議会の専門職員がやってきて、財政状況も調べたらしい。そして高額療養費制度の、負担金減額認定証の申請を代行してくれて、入院中のわしのベッドに認定証が届けられた。
また、カミさんのケア・マネージャー選定作業も、すぐに始められた。
これらのことを、わしはすべてあとになって知ったのだが、その対応の敏速さに驚き感心した。手練れの集団スリ・グループの連携だって、ここまでスピーズディかつ手落ちなく完璧に行なわれることはないのではないか。
このブログには何度も書いているが、わしはこれまで医者にかかったことのない、大食いと健康だけが取り柄の男だった。で、今までまるでこの方面に関わりなく過ごしてきて、こうした事情に関してはまったく無知な人間だった。
だからもし今回、頼みもしないのに脳梗塞がやってきてくれなければ、世間知らずの愚昧な老人夫婦のままだった。世の中は大きく変わっていて、高齢者の介護インフラもこのように整備されていることを、知らないまま生きていた。
いくら大食いと健康が取り柄といったって、不老不死の永久免許をもらってる訳じゃない。
いや事実は逆で、最近の当ブログを読めば一目瞭然だが、足がよろめいてほとんど倒れる寸前になっていた。
そのまま突然大倒れしていたら、予備知識がまるでない上に、地域に必要な人間関係も築かれていないので、右往左往して大変だったと思う。
いま、カミさんは近くのデイサービスに週2日通うようになり、さまざまな人間関係も生まれている。楽しそうだし、なにより日々の生活にハリが出てきたように思う。
昔から禍福は糾える縄のごとしというが、案外わしの脳梗塞も、神サンの深か~い計算の手の内にあるのかもしれない。
当ブログは週1回の更新(金曜)を原則にしております。いつなんどきすってんコロリンと転んで、あの世へ引っ越しすることになるかもわかりませんけど、ま、それまではね。
ここまでが正常、ここから先は要注意、とかはっきりと線引きが出来ればいいのですが、専門家の方が見たら、分かるのですかね。会話の中でやはりちょっと・・・・という事になるのでしょうか?いずれ来る事なので何かポイントになる事があれば、自分でも「あれ!」と気付くこともできるかもしれないと思うのですが。そしたら早くそれなりの対応が出来ると思うのですが。家族が絶対これは変だぞ!と気付いたときは遅いのではとも思うのです。