時代の最先端流行を行く

風呂嫌い

 妻は80歳をいくつか超え、認知症が日々進行している。
 相棒である私は、90歳に近くなって、老衰の進行が昨今とみに目立つ。
 どこから見ても、時代の最後尾をヨタヘロ歩いている老夫婦である。現代社会から足を踏み外しかけている。いやもう半分くらい、行列の端から落っこちているかもしれない。

 だがそんな古夫婦も、一昨年辺りから流行し始めて、10代の若者の6割がそれに染まっているという現象と、同じコトを生活の中で日々やっている。
 だがじつはこれ、前回の話(きれい好きだった妻の変貌)の続きである。(前回はこちら
 ・・・つまり、潔癖症だった母親譲りでやや異常なほどの「きれい好き」だった妻が、認知症の進行と共に「きれい好き」が異常でなくなり、さらに普通を通り越して普通以下になったのと、軌を一にしている現象である・・・といえる。

 彼女はその当然の結果として風呂好きであった。
 好き嫌いというより、「生きているコト・イコール・一日一回かならず風呂に入るコト」であった。
 どんなことがあっても・・・雨が降っても風が吹いても、地震が来ても洪水がきても、風呂桶が壊れたり流されたりしない限り、風呂に入った。
 
 そんな人間がである。ここ一,二年、風呂に入るのを嫌がるようになった。避けよう避けようとする。私にとってそれは、カラスがホーホケキョと鳴き出したのと同じくらいの驚きであった。
 むろん認知症が手を下した結果である。それ以外に考えられない。

 下手人が認知症とあれば、放っておくと以後死ぬまで「風呂なし人間」になりかねない。それはそばに居る者としてはあまり嬉しい状況ではない。
 「馬を水辺に連れて行くことはできても、水を飲ませることはできない」という英国の諺があるが、嫌がるのをムリヤリ衣服を剥がして風呂に入れるのは、60年つづけた夫婦でもなかなか難しい。かなりのエネルギーが要る。面倒この上ない。

 第一、現在の妻はもはや一人では風呂に入れない。入っても何もしないで出てくる可能性があるし、タイルで足を滑らせて転倒でもすれば、狭い浴室の中のこと、頭部を強打して大ゴトになりかねない
 だが彼女は私がいっしょに入るのを嫌がる。新婚初期(ほぼ60年前)に何度かいっしょに入ったことはあるが、それ以後は皆無だったからであろう。老いた身体を見られたくないらしい。べつに見たくもないけど・・・。

 それに実を言うと、私自身も最近、風呂に入るのが面倒くさい。できるならゴメンこうむりたい・・・という気持ちがある。
 ・・・というような訳で、妻を背負って風呂に入るのは、今の私にとってちょっとした大仕事だ。
 
 そこでデイサービスに助けを求めた。
 以前触れたこともあるが、彼女は現在、週数日デイサービスに通っている。
 そのデイサービスに入浴もお願いすることにした。多少追加料金が必要になるが引き受けてもらえた。
 正直、ほっとしている。
 
 「フロキャン」という言葉をご存知だろうか。
 グーグルに次のように説明されている。
 「身体的・精神的な疲労や面倒くささから、入浴(シャワー・湯船)をスキップ・後回しにすること。その行動をとる人々のこと。髪を乾かすのが面倒、仕事で疲れているといった現代人のストレスや、Z世代の『やめる選択』をする文化が背景にあり、共感を集めた。若者を中心に、10代以下の6割が風呂嫌いという調査結果もある」
  「元々は『風呂キャンセル界隈』と言っていた。風呂嫌いを公言するアイドルなども登場し、話題となった。不潔さを推奨するものではなく、現代の疲労困憊な日常の中で『入らなくてもいいや』と割り切る、ある種のセルフケアや開き直りの共感ワードとして普及している」

 つまり、時代の最先端を行く若者と、最後尾にぶら下がっている老人が、同じようなことをしているわけである。
 ・・・というわけで、世の中はなかなかオモシロシイ。・・・ところもあるワ
 

        お知らせ
当ブログは週1回の更新(金曜)を原則にしております。いつなんどきすってんコロリンと転んで、あの世へ引っ越しすることになるかもわかりませんけど、ま、それまではね。

ポチッとしてもらえると、張り合いが出て、老骨にムチ打てるよ

にほんブログ村 その他日記ブログ 言いたい放題へ
(にほんブログ村)

Follow me!

時代の最先端流行を行く” に対して1件のコメントがあります。

  1. 色呆け爺 より:

    「時代の最先端を行く若者と、最後尾にぶら下がっている老人が、同じようなことをしているわけである。」
    若い方々と同じ行動をされるとは、お疲れ様でございます。
    私の妻も要介護3で、危ないのでお風呂に一人では入れません。当人は私に介護されるのは嫌かも知れませんが、今の所入浴したいとの意欲が勝り私の入浴支援を受けています。
    足が上がらずバスタブを越えられないので、スノコを敷き少し高くし更に私が足を持ち上げて入浴させています。顔だけは自分で洗っていますが、頭の先から足の先迄、当然股間も私が洗います。脱衣所は寒いので電気ストーブで暖めています。
    今後病状の進行に伴い、ますます体が動かなくなり認知症も進行すれば、私一人では介護出来なくなり介護施設のお世話になる日も近いのかも知れませんが、私が出来る間は介護を続けようと思っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です