息を止めて水に耐える -闘いの極意ー
12月に入って急に寒くなった。
正確には、月のはじめの数日間は25度に温度のあがる日もあって、12月としては観測史上何番目・・・とかいう暖かさだったのだが、空の上でどんなトランプ式取り引きがあったのか知らんが、急転直下 真冬の寒さになった。
こういう乱高下は、女房の機嫌の上がり下がりで日々鍛えられているとはいえ、年寄りにはやはりこたえる。特に寒いのが・・・。
朝、新聞をとりに玄関を出ると、通学途上の小学生たちが家のまえを通る。中には半ズボンやスカートの子もいて、生足。改めて年齢に銃剣を突き付けられたような気になる。
で、本論に入る。(「論」というのはわしのカッコ付けネ)
わしは毎夕、食事をとる前に風呂に入る。浴室に入ったら、湯に浸かるまえにまずシャワーを浴びるのが習慣だ。一日に降りかかった世の俗塵と、わが体が使い捨てた古細胞を洗い流す。
もちろんシャワーはお湯にする。たとえ真夏でも、いきなり水を浴びるようなことはしない。
そんなこといちいち言わなくてもいいが、わざわざ言ったのは、若いとき(30代半ばだったかな)雪が降っている寒い日でさえ、頭から冷水を浴びていた時期があったからだ。風呂場の窓をあけて、外の雪景色を背景にその水浴び姿を女房に撮らせたのを思い出す(その写真は今もどっかにあるはずだ)。
何のためにそんな気ちがいじみたことをしたのか、今になると訳が分からない。ま、若いときってのは、有り余る無駄なエネルギーがあるってことだろう。
で、現在のシャワーの話に戻る。
シャワーヘッドから出てくるお湯は、だいたい円錐形に広がるが、その中心部分は暖かくても、周辺部分は初めのうちしばらくは暖かくない。
火元から風呂場まで距離があるので、道管を通ってくるあいだに冷やされるのだろう・・・とわしはシャーロック・ホームズにも負けない “推理” をしている。
ともあれこのシャワー周辺部のお湯になりきらないお湯が、寒くなると老体にこたえる。周辺部分も完全にお湯になるまで待てばいい、とワトソンなら言うかもしれんが、その待つあいだも素っ裸のままだ。これだって冷気にさらすのだから、こたえるのは同じ。それに、やせて骨だらけの体が浴室にただ突っ立っているなんて図は、誰も見ていないとはいえ(デバガメも来ない)、決して心躍る光景ではない。少々冷やっこくても我慢してシャワーの下に入る。
そのときちょっとしたコツがある。冷たさを感じる最初のうちだけ、息を止めるのだ。その止めた息をグッと下腹部に押し込めて力を入れる。そうするとシャワー周辺の半冷水をガマンしやすくなる。
ある剣の達人が言っていたのを思い出す。
剣道では対戦者の呼吸を読むことが何より大切だ。相手が息を吸う瞬間を狙って打ち込む。でないと勝てない。
逆に攻撃をうける側からいえば、息を吸う時にに打たれると強く効くが、息を吐く瞬間に打たれたときは耐えやすい、と。
ボクシングのバンタム級王者を10回防衛し、ついで3階級世界制覇もなしとげた長谷川穂積選手が、テレビでこんなことを語っていたのも思い出す。
「なにより呼吸が大事。相手の呼吸を見て攻撃する。自分から呼吸のフェイントをかけることもある」
日本の大きな寺院では、入口の門の左右に仁王像が立っている。仏敵を追い払う金剛力士像だ。ふつうは2体で一対の阿吽(あうん)像。大きく口を開けた阿(あ)形像は、闘うときの息を吐く表情を表わし、吽(うん)形像は口を閉じて息を吸う表情を表していると言われる。つまり闘いの根幹要素は呼吸にあるというわけだ。
要するに、格闘技ではなにより呼吸が大切なのである。
そしてわしは、その格闘技の神髄を風呂場で実践している、というわけデスね。シャワーの半冷水を相手に。
どうです、スゴイでしょ!
ポカーンと口開けて生きてんじゃねーよ!
・・・ってこれ、もちろん、ワタシに言っているのです。
当ブログは週2回の更新(月曜と金曜)を原則にしております。いつなんどきすってんコロリンと転んで、あの世へ引っ越しすることになるかもわかりませんけど、ま、それまではね。
なんという!!!
先にお湯を出し始めてから、洋服を脱いで、浴室もシャワーのお湯も温かくなってから浴びてください!
「年寄りの冷や水」とは、このことだわ(怒)
お金がいくらっても、命は売ってませんから!
その体、もっと大事に使ってください!
きょうの記事はむらさきさんあたりに叱られそうだと思ってました。
「年寄りの冷や水」と言われるのは当然だけど、いくらお金があっても・・・って
誰の話?