市役所での小さないざこざ
もう50年ほど前になるが、わしは面白半分で探偵事務所に半年ほど勤めたことがあった。
そのとき週に2,3回くらい、役所へ謄本や抄本など公的文書を取りに行かされたことがある。入ったばかりの新米は、最初はそういう技術や経験の要らない仕事をやらされたのである。
さて今年、義母が亡くなってその相続手続きなどで、何十年ぶりかで公的書類をもらいにあちこちの役所へ行ったら、様子や作業の仕方が大きく様変わりしていた。
窓口へ行くと、(最近はどこでもそうだけど)まず整理番号札を取って順番を待っておれと言われる。
言われた通り整理札を手にして待合室で待つ。
待たされる時間はケースバイケースで、短くて5分、長いときは20分~30分くらい待たされる。
多くは本を読みながら待つのだが、うっかりすると順番が来ても気づかないことがある。
というのは、昔のように名前を呼ばれるかわりに、受付カウンターの上にある液晶ディプレイに、整理番号札の数字が出るだけだからだ。
窓口へ行くと、(最近はどこでもそうだけど)まず整理番号札を取って順番を待っておれと言われる。
言われた通り整理札を手にして待合室で待つ。
待たされる時間はケースバイケースで、短くて5分、長いときは20分~30分くらい待たされる。
多くは本を読みながら待つのだが、うっかりすると順番が来ても気づかないことがある。
というのは、昔のように名前を呼ばれるかわりに、受付カウンターの上にある液晶ディプレイに、整理番号札の数字が出るだけだからだ。
数字が出るときピンポンといった電子音が鳴るところが多いが、たまたま読んでいる本に身が入っていると、ピンポンが耳に届かない。で、ときどき顔を上げて、ディスプレイの数字を確かめる必要がある。まだ大丈夫かな? 通り過ぎてないかな?・・・と。
窓口の職員はたいがい昔より親切だ。言葉づかいもていねいだし、たまに笑顔だって浮かべてくれる。それが若い女性だったりすると、それもきれいな人だったら、べつに理由も根拠もないけど嬉しくなる。(おいおい、歳を考えろ、歳を!)
窓口の職員はたいがい昔より親切だ。言葉づかいもていねいだし、たまに笑顔だって浮かべてくれる。それが若い女性だったりすると、それもきれいな人だったら、べつに理由も根拠もないけど嬉しくなる。(おいおい、歳を考えろ、歳を!)
とはいっても、全部がぜんぶ親切な職員ばかりではない。連番で10枚買った宝くじがぜんぶ当たり籤だった・・・なんてことがないのと同じだ。
先だって引っ越ししたあと、転居先の役所へ転入届を出しに行ったときのことだ。
応対に出た職員は中年女性だったが、最初から何となく機嫌が悪そうだった。
わしは、中年女性をよろこばせるような若いイケメンとは言わないが、わけもなく相手を不機嫌にする顔ではない。(・・・と自分で思っているだけかもしれないけど)
転居前の役所から貰ってきた転出証明書など、必要書類をそろえて提出したところ、印鑑もお願いしますと言われた。
「え、印鑑? 印鑑が要るんですか?」
思わず声が高くなったのは、じつは数日前にこの役所へ電話を入れて、転入手続きには何が必要かを訊いていたからだ。そのとき印鑑が必要だとは言われなかった。
そう言うと、そんなはずはありません、と棒のような声で答える。
でも実際にそうだったので、そう言ってネバると、
「そのとき電話に出た職員の名前を覚えていますか? 名前を言っているはずですが・・・ 」
言われてみればたしかに頭で「○○課の▽▽です」と名乗ったように思うが、そんな名前をいちいち覚えているはわけがない。こちとらはとくべつ健忘症に秀でているのだ。そう言うと、
「それじゃ確認の取りようがありませんね。ともあれ出直してください、印鑑をもって・・・」
ここへきてついわしの悪いクセが出た。カンシャク玉の導火線に火がついたのである。爆発まではいかなかったが、声がだいぶ高くなった。
「ねえ、そういう言い方はないんじゃないの。出直したりする必要がないように、あらかじめ電話を入れて訊いたんだよ!」
先だって引っ越ししたあと、転居先の役所へ転入届を出しに行ったときのことだ。
応対に出た職員は中年女性だったが、最初から何となく機嫌が悪そうだった。
わしは、中年女性をよろこばせるような若いイケメンとは言わないが、わけもなく相手を不機嫌にする顔ではない。(・・・と自分で思っているだけかもしれないけど)
転居前の役所から貰ってきた転出証明書など、必要書類をそろえて提出したところ、印鑑もお願いしますと言われた。
「え、印鑑? 印鑑が要るんですか?」
思わず声が高くなったのは、じつは数日前にこの役所へ電話を入れて、転入手続きには何が必要かを訊いていたからだ。そのとき印鑑が必要だとは言われなかった。
そう言うと、そんなはずはありません、と棒のような声で答える。
でも実際にそうだったので、そう言ってネバると、
「そのとき電話に出た職員の名前を覚えていますか? 名前を言っているはずですが・・・ 」
言われてみればたしかに頭で「○○課の▽▽です」と名乗ったように思うが、そんな名前をいちいち覚えているはわけがない。こちとらはとくべつ健忘症に秀でているのだ。そう言うと、
「それじゃ確認の取りようがありませんね。ともあれ出直してください、印鑑をもって・・・」
ここへきてついわしの悪いクセが出た。カンシャク玉の導火線に火がついたのである。爆発まではいかなかったが、声がだいぶ高くなった。
「ねえ、そういう言い方はないんじゃないの。出直したりする必要がないように、あらかじめ電話を入れて訊いたんだよ!」
近くにいる人の顔がいっせいにこちらへ向くのがわかった。
部屋の奥のほうから、上司らしい50がらみの男が出てきた。
部屋の奥のほうから、上司らしい50がらみの男が出てきた。
女子職員に事情を訊いてから、ごくふつうの顔と声で言った。
「転出された市役所に電話を入れて確認を取りますから、しばらくお待ちいただけますか?」
「転出された市役所に電話を入れて確認を取りますから、しばらくお待ちいただけますか?」
待合室で15分ほど待たされてから、名前を呼ばれて窓口に行くと、
「確認が取れましたので今回は受理しますが、次回からは印鑑もお持ちください」と言われた。
今回は許すが、次回からは間違えるなと注意されたわけだ。
「確認が取れましたので今回は受理しますが、次回からは印鑑もお持ちください」と言われた。
今回は許すが、次回からは間違えるなと注意されたわけだ。
多少スッキリしないものが残ったものの、ともあれ二度足を踏まなくてすんだので、黙って引き下がった。
ただ腹の中でつぶやいていた。
「次回からは注意せよとのお言葉ですけどね、今回でコリゴリ(高齢者の引っ越しは地獄)ですので、あっしはもう二度と引っ越しは致ししません。したがって転出届や転入届を出すことも、金輪際ありません」
・・・とつぶやいてから気がついた。
いやもう1回あるな。あの世への引っ越しが・・・。
「次回からは注意せよとのお言葉ですけどね、今回でコリゴリ(高齢者の引っ越しは地獄)ですので、あっしはもう二度と引っ越しは致ししません。したがって転出届や転入届を出すことも、金輪際ありません」
・・・とつぶやいてから気がついた。
いやもう1回あるな。あの世への引っ越しが・・・。
お知らせ
当ブログは週2回の更新(月曜と金曜)を原則にしております。いつなんどきすってんコロリンと転んで、あの世へ引っ越しすることになるかもわかりませんけど、ま、それまではね。
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