サエない話・・・パソコンのわが家の使い方

相撲中継

 今やどんな高齢者の世帯でも、パソコンの1台くらいは家に置いてある。白くホコリを被らせているかどうかは別にしてね。

 わが家には2台ある。
 1台はデスクトップ型でわしの部屋に置いてあり、わしが毎日使う。このブログを書くのにも使っている。
 もう1台はノートブック型で、居間に置いてあってこちらは主にカミさん用だ。使う頻度はうんと落ちるが、こっちは特別な使い方をする。
 
 もう何度も触れているけれど、カミさんはある種のMCI(軽度認知障害)に足を取られていて、記憶力の減退がはげしい。
 きのうも「今晩なにか食べたいものある?」と問われて、「久しぶりに肉ジャガが食べたいなあ」と言ったら、「肉ジャガって何?」と訊かれて声が出なかった。彼女はこれまで何十回となく「肉ジャガ」を作ってきたし、日本人が「肉ジャガ」を忘れるのは、パンダが「笹」を忘れコアラが「ユーカリ」を忘れるのに等しい。ついにここまできたか、今に「あなたさん、どちらさんで?」と言われるのではないかとコワい。
 
 しかし肉ジャガはまだよい。「ジャガイモを肉や玉ねぎと一緒に、醤油や砂糖などで味つけした煮物」と説明すればなんとか思い出してくれる。「ジャガイモ」も「肉」も「玉ねぎ」も、ほぼ毎日冷蔵庫を開けたとき見ているモノだから、さすがに忘れていない。政治家は認知症になっても、「票」と「金」は忘れないらしいが、それと同じかも・・・ね。

 しかし別のとき「相撲って何?」と訊かれて、「男が裸になって、ぶっつかり合ったり取っ組み合ったりするスポーツ」と言ってもピンとこなかった。「なんでわざわざ裸になるの?」という感じで、記憶呼び起こしのルートに乗ってくれない。
「ほら、太った大男が頭をちょんまげに結って、フンドシ一丁になって、狭い丸い土俵の中で取っ組み合っているのをテレビで見たことあるだろ?」とかなんとか言って、思い出してもらえるまでソートー苦労した。
 
 そのときふと思った。絵を見せれば早いんじゃないのかなって。まさに百聞一見にしかずじゃないのって。

 ・・・とはいっても、モノを訊かれるたびに、サラサラと絵を描ける才能はわしにはない。
 そこで思いついたのがパソコンだ。パソコンで画像検索をすれば、まず出てこないものはない。「屁」や「口臭」でさえ、検索欄に入れてググればそれなりにちゃんと出てくる。
 
 たまたま友人のひとりが、使わなくなったけど、捨てるのはモッタイナイから使ってくれるか、と言って送ってきたパソコンが1台あった。そいつを居間の手近なところにおいて、上記の目的のために使うことにした。
 
 早速ホコリを払って蓋を開け、電源を入れた。
 ぶじ電源が入ってモニタは素直に絵を出したが、なかなか操作がスムーズにいかない。つまりマウスやタッチパッドから指示を出しても、反応が信じられないほど遅い。故障したのかと思うほど。パソコンがいわゆる重い。
 
 おそらく、それはこのパソコンの前の使用者(わしに譲ってくれた友人)が、長いあいだ使いっぱなしにして、手入れをしなかったからに違いない。パソコンに電気のゴミが溜まりに溜まったのだ。

 面白い、といつも思うのだが、こういうことは機械も人間も同じなのだ。
 たとえば夫婦。
 長い間いっしょに同じ家に住んでいても、こまめに手入れ(スキンシップだけじゃなくイロイロあるよ)をしないで放りっぱなしにしておくと、日が経つうちにゴミが溜まって、何かをきっかけに(たとえば亭主の定年を機に)目詰まりを起こして動かなくなる。暴発することだってある。 

 機械はどんなに複雑でも、論理的合理的に筋道をたどれば、必ず原因に突き当たる。ゴミは取り除けられる。
 ところが人間はそうはいかない。人間というのは複雑で厄介な存在だ。・・・と改めて思い知らされる。
 
 ・・・で、話の本題にもどるが、ともあれパソコンはふつうに動くようになったけれど、やっぱり問題は人間だった。思い通りに動かないのだ。

 早い話、カミさんがもの忘れをして、話が通じなくなっても、そのたびにパソコンを開いたりしないのである。
 そもそも一国の命運がかかった交渉ごとをしているわけではないし、そんなしちメンドーなことを人間は・・・ってテメエのことデスが・・・イチイチやらないのである。

 で、結局、第2のパソコンはわしの仕事部屋から居間に移っただけで、相変わらず誇りを・・・じゃなかった埃を厚く被ったままになっている。

・・・というサエない話デシタ。

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