物好きなデキモノ

徘徊する入れ歯

 多くは2週間ほどで治癒するので、歯周病みたいに余り世上の口に上らないないが、「口内炎」というのはけっこう厄介な疾患である。
 口内炎とは口の中にできる炎症。

 この余計な “出モノ” が口の中にできるのは、ストレスとか栄養の偏りとか、他の病気の影響とかいろいろ原因があるらしいが、わしの場合は「物理的刺激」が原因になることが多い。
 
 自慢するわけではないが、わしの歯はほぼ全員が作りものである。今をときめくAIならぬAT(Artificial teeth)。
 芸能人並みに白いうえに、一乱れず歯並みが揃っていて、見た目にはモデルの歯みたいにきれいだが、内実となるといろいろ問題がある。
 
 わしにとって最大の問題は食べ物の味が落ちることだけど、接着剤(義歯安定剤と呼ばれる)を付けていないとき、歯が何かというと持ち場を離れて勝手に口のなかを歩き回るのが困る。
 
 その結果、この徘徊義歯が口内のあちこちによけいなチョッカイを出す。で、ノミが噛んだくらいの小さな傷ができる。・・・ことがある。
 その傷の所に、わしの場合はたびたび口内炎が生じる。
 
 始めはのうちは、米粒の足に踏まれたかと思うくらいで、ほとんど痛みを感じない。だからつい軽くみて放っておく。

 だが、おとなしく静かな日々が4,5日ほど続いたあと、突然、米粒の足がハリネズミの毛に変わりはじめる。
 そうなるともうあとはもう一気呵成・・・というか、猛烈な勢いで痛みがヒートアップする。

 発症時から数えてだいたい1週間から10日くらい経った頃に、ピークがくる。
 患部は黄色く膿み、その周辺が赤く腫れあがって、触ると跳び上がるほど痛い。思わず音を上げる。

 食べたものがちょっと触るだけでも泣きたくなるから、おちおち食事もできない。だからといって怪我をしたサッカー選手みたいに、食い物はしばらくピッチに出さないでおくか・・・というわけにはいかない。命に関わる。困る。
 
 そういう口内炎は、多くは口のなかの粘膜部分に生じる。唇の裏とか、頬の裏とか・・・。ときに舌にもできる。

 ところが先日、どういうわけか歯ぐきにできた。上の歯を抜いたあとのいわゆる歯肉部分。今まで何十回となく口内炎はできたが、歯が抜けたあとの歯ぐきに出てきたのは初めての経験だった。よほど物好きなヤツだったらしい。
 
 わし自身がどちらかというと物好きなので、物好きは嫌いではないが、この口内炎には参った。
 痛くて義歯をはめられないからだ。
 
 総入れ歯の場合、上下の義歯のどちらかが使えないと、食事がまったくできない。
 たかが入れ歯くらい・・・と歯が健康な人は思うかもしれない(わし自身かつてそうだった)が、噛めなくて食事ができないという状況は、これ以上ないくらい情けない気持ちにさせられる。お前は生きていなくていいよ、と言われているのと同じように思える。
 
 もちろん、何でもかんでもミキサーですり潰してウムを言わせず喉の奥へ送り込んでやれば、生きていられることは生きていられる。
 しかし老人というのは、生きていることの喜びもしくは楽しみの大半は、食べることの中にしかない。人間(・・・というかわしは)はまさしくそういう生きものである。
 静脈栄養や胃ろうなどと同様、ドロのように潰した食べものだけで生きろ、と言われるのはつらい。
 
 長く生きていればいろんなことが起きる。
 思いもしなかったことも起きる。
 歯が抜けたあとの歯ぐきに口内炎ができる、というのもそういうものの一つだろう。
 第三者には、どうということのない小さなことにように思われかもしれないが、当人にとってはけっこう大きな問題の一つである。
 
 今年もこういう連中を相手にしながら生きていく。
 ま、命のある間だけ・・・デスけどね。
 

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