歯医者に行く密かな楽しみ(Part 2)
きのうは、老いさらばえてもなお、生きものの煩悩から自由になれないいじましい・・・というか情けない男たちの『歯医者に行く密かな楽しみ』を紹介した。
きょうはわし個人の、もう1つの “歯医者へ行く楽しみ” を書いてみる。
わしが通う歯科医院の待合室は広い。つまり待たされることが多い。評判がいい医院であることもあって、10分15分はざら。時には30分近くも待たされる時もある。
何のために時間予約だ?
・・・って思わないでもないんだけどね。まあこの世は思い通りにいかないのが普通だから・・・と誰も文句を言わない。
結果、いつも4,5人以上の老若男女が手餅豚さ・・・あ、変な変換が出ちゃった、手もちぶたさげに座って待ってる。
若いのはほぼ例外なくスマホをイジってる。
あるいはスマホにつながったイヤホンを耳の穴に突っこんで、かすかに膝をゆすりながら目をつむってる。
目はつむっても口は少し開けてるのもいる。
年をくった連中は、年齢・性別に応じて待ち姿もそれぞれだ。
しかし、自分の番はまだかという気持ちが豊かなシワのすきまに滲み出ているところは、共通している。
医者側にも言い分はあるようだ。
時間が予定をオーバーするのは、それだけ丁寧な治療をしているからだ、待つのがイヤなら、ほかの歯科へ行ってもいいんだよ、と言いたげな気配もどっかにある。
しかし、そうストレートにものは言えないから、まあヒマつぶしにでもしてよ、って感じで各種週刊誌・月刊誌、ついでに歯科関連の資料ファイル(誰も見やしないけどね)がマガジンラックに放りこんである。
さて、ようやく本題に入る。
歯科医に行くわしのもう1つの楽しみは、実は待合室に置いてあるこれらの雑誌類なのだ。特に女性誌。
女房と二人だけでボケモン島に住んでる今のわしの環境では、女性誌なんてまず読めない。…ていうか100%ムリ。
「知らなかった、あんた、そっちのほうの趣味があったの?」
なんて言われたくないからね。
近ごろは、男性週刊誌だってムリだな。
“死ぬまでSEX、死ぬほどSEX” だの “女性○器は百人百様” だの “女房も驚く活力再現!” なんて文字が、表紙や目次に踊っているからね。
こんな週刊誌を密かに手にしてるとこを女房に見られたら、以後死ぬまで白いメで見られる。いや、次の日からメシが出てこなくなる可能性もある。
というわけで、歯科医の待合室がわしの密かな図書室になった。
老い先短いとはいえ、わしの好奇心はけっこうまだ旺盛なのだ。
あっちの方だけなく、こっちの方もだ。
えッ、あっちの方ってのはまあ分かるけど、こっちの方ってどっちの方?
聞きたきゃ教える。言わずと知れたこの世だ。
わがボケモン島の岸辺を洗っとる、変貌いちじるしい21世紀のこの世。
わしは、いま世界はどのように変化しているかに、大いに興味がある。とにかくあの世へ強制的に送り出されるまでは、しっかりと時代の変化を見つめていたい。
偏ったり歪んだり濁ったりしているとはいえ、これらの雑誌はわしにとっては、この世の変化変貌を覗き見るできる絵巻物なのだ。