男が立ってするのは犯罪?

 改めていうのも恥ずかしいが、わしは男である。
 よって立ってする。
 立って何をするのか?
 小便。
 要するに、わしは男であるがゆえに立って排尿する。
 不思議でも何でもない。
 異常でもない。

 ふしぎでも異常でもないが、問題はある。
 地球上のすべての男に共通する問題だ。

 余談だが、少なくとも昔の日本家屋には、排便用の便器のほかに男性用小便器が付属していた。しかし今は着座式(洋式)便器一つだけを備えるのが一般だ。あきらかに合理性・経済性のみを追求して、男の心情を無視した “文明の退化” であるとわしは考える。

 話を戻す。
 着座式便器で男が排尿するには、便座に座ってするか、便座を上げて立ってするか、当然ながら2つに1つしか選択肢はない。

 わしはどうかというと、座ってすることに抵抗がある。
 明快な理由はない。何となく気持ちが落ち着かない。イサギヨシとしない。
 おそらくわが人生の大半において、男は立ってする女は座ってする、というのが常態であったせいだろう。座ってするのは “女みたい” だ、というどことない居心地わるさが心理の隙間に入り込む。もっと言えば、「男は立ってナンボのもんだ」というのがあるかもナ。
 そこで、とにかくわしは立ってする。
 ”着座式” 便器で “立って” したからといって、べつに法に触れるわけではない、とささやかな放物線を見下ろしながら心のなかで呟いている。

 とはいうものの、実をいうとそれでもまだ “すっきりした” とはいかない。
 生理的にはすっきりしても、実は心理的に罪の意識がどこかにつきまとっている。
 なぜか。

 ここでちょっと想像していただきたい。庭でゴムホースから水を放出させるところをだ。
 主流となる中心部の水流周辺に、細かなしぶきが広がるのがわかるだろう。
 これは物理現象。
 男の立ち小便も、この物理法則から逃れられない。
 つまり便器の周辺にはオシッコの飛沫が飛び散る。
 女房はこれをひどく嫌がる。目ざとく飛沫の痕跡を見つけ、指摘し、指弾する。

 NHKの人気番組に『(ためして)ガッテン』という放送がある。数ヶ月前にこの問題を取り上げた。便器のまわりに尿のしぶきが飛び散る現象を、NHKらしく科学的に実験し証明する内容だった。飛沫跡を蛍光色にしたりして、誰にも分かるようにして見せた。
 隣で女房もわしと並んでこの番組を見ていた。わしはまずいなァ~と思ったが、そこでいきなりチャンネルを変えるわけにはいかない。女房にとつぜん電話でもかかってこないかなァ~とも思ったが、この世はそう都合よくコトが起きることはない。
 彼女は番組を終わりませぜんぶ見てしまった。が、視聴後何も言わなかったが、その方がかえって効いた。

 しかし、これしきのことで人生の方針を変えるほどわしはヤワではない。
 相変わらず立ってする姿勢を崩していない。
 だがそれ以降、排尿のさいに微妙に罪の意識がつきまとうようになったのである。
 生きるということはメンドー臭い。

ポチッとしてもらえると、張り合いが出て、老骨にムチ打てるよ

にほんブログ村 その他日記ブログ 言いたい放題へ
(にほんブログ村)

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です