チンピラに肩を抱かれて

 テレビをつけたらドラマを放映していた。
 サラリーマン風の中年男が、数人のチンピラに囲まれて脅されているシーンだった。
 
 ふいに学生時代のある出来事が甦った。60年ほとんど思い出すこともなかったが、脳細胞のどこかに残っていたらしい。
 
 当時通っていた大学へは、最寄り駅から20分ほど歩いて通ったのだが、途中でちょっと横手にそれると繁華街があった。

 で、下校の際は、たいてい仲間とその繁華街にある喫茶店に入りびたった。
 一杯のコーヒーで長々とねばり、周囲の迷惑もかえりみず声高にどうでもいいことをダベッたり、内容空疎な議論にツバを飛ばしたりしたのだった。
 みんな精いっぱい背伸びして、小さな経験を2,3倍にふくらませて話したり、よく分からない難しい言葉を使って、本で読んだばかりの知識を自分の意見のようにひけらかしたりしたものだった。
 要するに時間のムダ使いをしながら、はた迷惑を乱造していた。
 
 わしはそのころある理由で金があった。それでふつうの学生は身につけないようなものを着ていた。それも少々派手めなヤツを・・・。
 
 それが気に食わなかったのかもしれない。あるいはひょっとすると、喫茶店でたまたま隣の席に座っていて、生意気な口のきき方をするいい気な大学生に反感を持ったのかもしれない。
 喫茶店を出て、仲間たちと別れて1人になったとき、いきなり後ろから太い腕で肩を抱かれた。
 
 明らかに世をすねてツッパッている連中だった。当時そういう輩の定番だったリーゼントを、滴り落ちそうなくらいポマードを塗りたくって決めていた。
 
 その安物のポマードの匂いが鼻を突いたと思ったら、低いドスのきいた声を耳たぶに吹きかけられた。
「おい、兄さんよ。おまえ、何様だ?」
 
 そうしたことがあったのをふいに思いだしたのである。
 だがいま思うと、向こうもどっかの学生で、精いっぱいカッコつけてツッパリを演じていたのかもしれない。連中のしぐさが映画の中のチンピラそのものだった。つまり付け焼き刃の物まね。
 
 生きものは・・・猫も犬も猿もみんなそうだが、いっしょにいるグループ内で常にランキングをする。
 つまり誰がだれより強いか、相手と自分とではどっちが上でどっちが下か・・・といった優劣順位を決めたがる。
 その方が日常生活のなかで無駄な争いを避けられるから・・・というのが動物行動学の定説らしい。
 
 だが、そうした生活上身につけた知恵だけではなく、生きものの本能のなかに元々、このランキング意識が組みこまれているのではないかと思う。
 
 早い話、わしがツッパリ連中にからまれたのも、喫茶店でわしがちょっと変わった服装をしていて、これみよがしの大口をたたいていたので、連中のこのランキング本能を刺激したのだろうと思う。
 
 個人に限らない。
 最近はお隣の大国と太平洋の向こうの大国が、世界の覇権を争ってツバ競り合いをやっている。
 貿易関税の上げ下げで脅しあっている間はまだいいが、核兵器を頭にのっけたロケットの打ち上げ競争をやり始めたら・・・!
 
 困ったもんだけど、わしには何もできんしなァ。
 

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