貧乏くじを引いた椅子

 
 

 去る3月2日の当ブログ記事『うそ寒い定位置』(→ こちら)で、わが家におけるわしの定位置は、パソコンの前だと書いた。

 だからといって、常に指のムチでキーボードを叩き、机の肌をマウスで撫でまわし・・・といったSMプレイじみたことばかりやっているわけじゃない。ガサゴソいわせて新聞を広げたり、指をなめなめ本のページをめくったりも、このパソコン前の椅子の上ですることが多い。のみならずその他のさまざまなことも・・・。
 たとえば足の指の爪を切るとき、この椅子に深めに腰をかけ、かかとを椅子の座面の前端に引っぱりあげて、切る。床に新聞紙を広げてね。
 
 つまりこの椅子は朝から晩まで、さまざまに酷使されている。
 チリも積もれば山となる、に似ているが、椅子もこうして一日中こき使われていると、いつのまにか少しずつ消耗してくる。あちこちに傷がついたり、剥げたりする。人間とおなじ。
 
 とりわけひどいのは台座。つまり臀部が接触する部分。老人の骨ばった尻にこすられて、消耗が激しい。
 
 といっても数週間や数ヵ月ではその変化に気づかない。しかし数年経てばその憔悴ぶりが目につくようになる。しだいに布がすり減り、けば立ったり生地が薄くなって破れる。中身がお出ましになる。最近ではウレタンが多いが、あいまみえて楽しい相手ではない。
 
 先日、とある司法書士事務所を訪ねたとき、所長が座っている事務椅子に目がいった。
 新しくはないのだが、立派な椅子だった。ひと目で高級品とわかる。機能的で美しいデザインのうえに、造りがしっかりしていて、みごとな本革が張ってある。見るからにバリバリ仕事ができそうな椅子だ。思わずじっと見入ってしまった。
 
 家に帰って、パソコン前のわが椅子を見て、思わず胸が痛んだ。
 
「お前さんも貧乏くじを引いたねぇ。ちょっとしたタイミングの違いで、若いきれいな女性のところへ買われて行って、その柔らかな尻の下で楽しく一生を送れたかもしれないのに、コトもあろうに爺さんのゴツゴツした尻の下で、ジメジメ日々を送らされているなんてねぇ」
 
 いま世界で指摘されている格差問題は、人間社会だけではないのでアリマス。
 

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当ブログは週2回の更新(月曜と金曜)を原則にしております。いつなんどきすってんコロリンと転んで、あの世へ引っ越しすることになるかもわかりませんけど、ま、それまではね。

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