先日、とあるメルマガに教えられて、「ニューヨークタイムズ」のウェブ版を見に行った。
　ネット上とはいえ、なぜわざわざアメリカくんだりまで出かけていったかというと、その記事のタイトルがちょっと目を引くものだったからである。

「恋へみちびく３６の質問」（The 36 Questions That Lead to Love）

　たとえ見ず知らずの男女でも、ここに紹介する３６の質問を互いにし合うと、恋に発展するかも･･･といった内容で、いかにもプラグマティズムの国アメリカらしい新聞記事だった。
　
　この記事にわしが目を止めたのは、”恋活” に興味があったからではない。いい年をしてコイもフナもない。正直いうとわしは「コイカツ」より「トンカツ」のほうに興味がある。

 

　にもかかわらずちょこっと気を惹かれたのは、この「恋活のための３６の質問」の中に、
「あなたにとって “完璧な日” とはどんな日ですか？」
　という質問が含まれていることが、先のメルマガに書かれていたからである。
　
　この質問は、恋に食指がうごく若者に限らず、わしらのように老い先みじかい老人の気も引く。
　老い先が短いからこそ、残り少ない１日１日をカンペキにしたい･･･と思う老人も中にはいないこともないからだ。ドン・キホーテ的だけどね。

 

　わしがそうだというのではないが、ただ、「老人にとっての完璧な１日とはどんな日なのだろう」ということに関心が起き、上記の記事をヒントにちょこっと考えてみようと思ったのである。

 

　で、考えてみた。
「老人にとって完璧な１日とはどんな日だろうか？」と。
「そのために必要なものとは何だろうか？」と。

 

　必要なものはゼッタイこれ、というものがすぐ頭に浮かんだ。これを外したら、尾頭付き鯛から頭を切り落とすようなものだ、というようなやつ。

 

　「健康」である。

 

　新味も意外性もない凡答で、わしとてさすがに気が引けるが、動かしようのない真実だから致し方ない。

 

　たとえどんなに地位と名誉と金があって、豪邸に住んで、美女を侍らせ、美食のかぎりを尽くしても、しょっちゅうコッチが痛いアッチが痛いアソコが痛い･･･というのでは面白くもおかしくもない。ただイタイだけである。

　ベッドの上で無数のチューブに縛りつけられていれば、横にいる美女に手も出せないではないか。
　
　要するに、１日を完璧なものにする他の条件がすべて揃っていても、ただ１つ健康がなければ、他のすべての条件は無にすべり落ちる。

 

　その意味では、１日を完璧なものにする上で絶対欠かせない “土台” となるものは、まちがいなく「健康」である。たとえそれがどんなに手垢まみれの事実であっても、動かせないとわしは考える。
　
　では、健康でさえあれば “完璧な１日” になるかといえば、そんなこたァない、ことは誰にでもわかる。

 

　森のゴリラのように健康であっても、友人知人がおらず、孤独で、１日じゅうアクビしかすることがない、とか、友だちはいるが銭がなくていつも肩身の狭いを思いをするとか、友だちも銭もないが古女房がいて、年がら年じゅう不平不満、愚痴泣言ばかり聞かせられているとか･･･。ま、人によって理由はさまざまだが、１日をカンペキにしない理由・原因は無限にある。
　
　つまり、「あなたにとって完璧な１日とはどんな日ですか？」と問われたら、厳然かつ毅然として「ない」と答える以外にないのである。

 

　･･･かというと、あるのである。

 

 「過去と未来を手放して、今の一瞬一瞬に生きる」ことである。
 
　すでに終わってしまった過去は悔やんでもどうにもならない。（覆水盆に返らず、だ）
　まだ来てもいない未来を心配しても意味がない。（一寸先は闇、だ）

 

　だから「今を生きる」。今の一瞬一瞬を、どのようなものであれ、それが動かせない現実なのだから、あるがままを無条件に受け入れて、その現実にどう対応するかだけに集中する。

 

　目の前に在る現実の上に立って、今の自分に何ができるか、どうするのが最善かを考え、判断し、決心をして、実行する。

 

　それができれば、その日は「完璧な１日」になるのではないか。
　･･･なるずである。
　
　･･･なんて、口で言うだけなら何とでも言えるわナ。
　だが言えることと出来ることは別。
　わしはその別の方。
　だからできる人にあこがれる。
　恋してると言ってもいいかもしれない。
 「恋へみちびく３６の質問」を見に行った理由である。
 
　 ･･･なんて屁理屈いってようじゃ、結局なにも出来んわナ。
 

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