ワクチンを打った

ワクチン接種

 数日前、ようやくワクチンを打った。

 最近のコロナ状況を見ると、わしらが住むところも医療はほぼ崩壊状態だ。
万が一コロナ様に目をつけられたら地獄を見る。
 医療機関は手いっぱい。救急車を呼んでもタライ回しされるだけ。つまり自宅療養という名の放置状態におかれる。それでもし重症化したら・・・。

 で、せめて、1日も早くワクチンを打っておきたい。
 それしかわしらに出来ることはない。密になるような場での飲み会や会食の自粛など、トーの昔から完璧にやってる。キャバクラでオネーちゃんの隣で酒を飲むことも、接待で饗膳を振る舞われることもない。
で、ワクチン接種にすがりつくほか、ない。

 まず予約を取るのが大変だった。
 幕開けの受付けのときに、予約開始と同時にネットでアクセスしたのだが、途中でちょっとモタついたら、早々と予約枠はすべて埋まってしまった。
 超有名なアーティストの、来日公演の切符取り争いに負けない。
 コロナってスゴイ人気者だ、と改めて思い知らされたわけだ。

 ともあれそれで学んだ。次の予約受付け開始のときには、獲物を狙うサバンナのチーターのように草原に身をひそめて・・・じゃなかったパソコン前に早くから背をかがめて座って、万全の気がまえで出撃した。

 必要な情報は前もって役所の「ワクチン接種マイページ」に打ち込んでおいた。接種番号とパスワードをメモした紙を、パソコンの枠に貼りつけた。

 当日の開始時間が近づくと、はやばやと受付け画面を開いた。そして1秒と狂わない時計を目の前に置いて、宇宙ロケットの打ち上げよろしく10秒前からカウントダウンをした。

 10秒前・・・9秒前・・・8秒前・・・・・・。
 半秒前で「Enterキー」を叩き、老脚をけって草原から飛び出した。

 前回の失敗経験に学んで、今回はあらかじめ手順の練習をしておいたので、作業はスムーズにはこんだ。
 接種会場を選び、接種日時を指定する画面へとぶじに進んだ。

 驚いたことに、このときすでに最初の2日間は埋まっていた。3日目の午後2時30分~2時40分の枠をなんとか確保できた。

 周辺の友人知人は、ほぼすべてが予約を取れなかったことを思うと、幸運だった。
 せっかくのこの幸運を、得意の物忘れでやり逃すことがないよう、カレンダーに大きな赤マルを入れて、毎朝舐めるように確かめながら接種日を待った。

 当日がきた。
 接種時間は午後なのだが、朝からなんとなく落ち着かなかった。
 昼食後、念入りに歯をみがき(べつに接種に関係ないけど)、腕を出しやすい衣服に着がえて、早めに家を出た。

 会場に着いたのは、予約時間より30分ほど早かった。
 建物前の屋外スペースに、運動会のときと同じようなテントが数張り張られていて、その下に並べられたパイプ椅子は、7,8割がたがすでに埋まっていた。ほとんどすべてが爺さん婆さんだ。

 一時期、重症化しやすく死者が出るのは高齢者だと言われていたので、そのせいかと思っていたら、しばらくして思い出した。この日の接種対象者は65歳以上だったことを・・・。65歳をこえても爺さんにも婆さんにもならない者がいたら、コロナだって一目置くワ。

「午後2時30分に予約された方は、中へお入りください」
ハンディスピーカーにアナウンスされて、わしを含め7,8人ほどが椅子から立ちあがり、建物に入った。杖をついたり家族の腕にすがっている者もいた。

 中へ入ると、アウシュヴィッツで収容者が持たされていたような大きな番号札を渡された。首からぶら下げはしなかったが、以後呼ばれるときは名前ではなく番号で呼ばれた。

 椅子にすわって10分~15分ほど待った。その間に、腕がすぐ出せるよう上着を肩脱ぎにした。

 番号を呼ばれ、係員に誘導されたコーナーへ行くと、横長の机がおいてあって、白衣は来ていないが医師らしい中年男がすわっていた。

 医師は名前と年齢を確認し、問診票に目を落とそうとしてふとわしを見ると、言った。
「まだ服は脱がないでいいです。接種まだ先ですから・・・」
 鼻先がかすかに笑ったように見えた。
 戦後の食糧難時代に育って、早食いしなければ食いっぱぐれた頃のクセが、まだ体のなかに残っているらしい。

 で、わしは昔からおっちょこちょいと兄貴に言われていて、この手の早とちりを笑われるのには慣れている。医師が問診票をチェックしている間に、笑われないよう服を着なおした。

 医師が書類に署名をし、それをもって次のコーナーに行った。
そこでまたパイプ椅子にすわって10分ほど待った。

 番号を呼ばれて中へ入ると、白衣を着て疲れた顔した中年の女性が迎えた。
 ここでも2,3なにか訊かれたように思うが、何を訊かれたか忘れた。机の上に接種用の器具が並べられているのを見て、ああ、いよいよだ、と思い、そっちの方へ気をとられたからである。

 テレビの映像で見ると、注射器の針はかなり奥まで射すようだ。少なくとも針先が2センチくらいは肉の中へ入っているように見える。

 心配だった。
 わしは歳を重ねるほどに痩せてきて、今や腕など、皮と骨のあいだにほとんど余裕がない。ハンドルに遊びのない車の運転は危険だ。2センチも射しこんで針先が骨と衝突事故を起こさないか。先端が折れて、骨の中に埋没しないか。なにより激痛を引き起こさないか・・・などと。

 もちろん、そんな子供じみた恐怖で接種を中止するほど、わしもボケてない。片肌脱ぎになった腕をぐいと接種者のほうへ向けて、目をつむった。

 ・・・が、いつまで経ってもチクリともしない。うすく目を開けて見ると、逆さにしたビンの中へ注射器の針を入れて、ワクチン液を取りこんでいるところだった。

 針を射した瞬間はほとんど痛くなかった。あれ、こんな程度? と思っていると、中のうほうがじわじわと熱痛くなった。
 もちろん我慢できないほどではないので、顔色ひとつ変えなかった。・・・ってわざわざ言うほどのこともないけど。

 接種が終わると、指の爪ほどの丸い絆創膏を貼りながら、今晩お風呂に入ってもいいが激しい運動は控えるように、といった注意がされた。帰りは全力疾走で帰ろうと思っていたが、やめた。

 やれやれ終わった・・・と思ったが、もうひとつやることが残っていた。
 三たびパイプ椅子にすわって10分ほど待ったのち、第2回目のワクチン接種の日時を予約した。

 1回目から3週間以降に、もう1回接種をすることが、効き目を確かにするために重要らしい。
 そのため1回目を終えた者は、2回目の予約を支障なくスムーズに取れるような仕組みにしてあったようだ。

 おかげでもう1回サバンナのチーターをやる必要はなかった。
 くり返しやったからってべつに面白くもないからねぇ。

 国民的イベントのわしの場合は、こうして終わったのである。

 ただし、2回目はまだ済んでいない。

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当ブログは週2回の更新(月曜と金曜)を原則にしております。いつなんどきすってんコロリンと転んで、あの世へ引っ越しすることになるかもわかりませんけど、ま、それまではね。

 

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