平凡な日常生活の中の不思議
朝起きたらオシッコに行って、歯を磨いて、顔を洗って、目玉焼きとトーストの朝めしを食って・・・といった退屈なことをくり返している毎日。
そういった実に平々凡々たる生活をしている人間でも、ときに訳の分からない不思議な・・・というか妙なことに出遭うことがある。
もちろん、それらはどうでもいい小さなことだ。
無視してそのまま忘れても、どこからもお咎めは来ないし、罰金を求められることもない。
が、ちょっと気になる。
話が跳ぶが、わしは実は週に2回、家の中に完全にひとりになる。
カミさんがデイ・サービスに出かけるからだ。
その日は朝9時ごろから夕方5時ごろまで、文字どおりまったくのボッチになる。
・・・ということは、何をしてもまったくの自由ってことだ。
念のため玄関にカギをかけて、外から覗けないよう窓のカーテンを閉めれば、ゴテゴテの厚化粧をしてドラッグ・クイーンに変身して楽しもうが、パンツも取っ払って文字どおり一糸まとわぬ裸踊りに狂おうが、誰にも迷惑はかけないし、どこからも文句はこない。
ただそんなことに興味がないから、やらないけである。
じゃ何をやってるかというと、新聞や本を読むとか、レコーダーに溜まっている録画を見るといった、これまた死にたくなるほど平々凡々たることだ。
数ヵ月前のことだった。
自室で図書館から借りてきた本を読んでいた。
その日はなぜか、隣の幼稚園の園児たちの狂ったような金切り声も聞こえず、本に集中していた。
そのとき、背後でかすかな物音がした。 ・・・したように思った。
わしは本から目を離して、ふり返った。
誰もいなかった。ゴキブリとか蛾出しそうなものもいない。
気のせいだったかと本に戻った。
が、数分するとまた音がした。
こんどはカソコソとはっきりと聞こえた。現実に何かモノがこすれたた音だ。
再度ふり返ってみたが、やはり何も見えない。
それきり音は途絶えた。
もちろん背後には本棚があり、その前には雑多なモノが乱雑に置かれているから、目に見えないところに虫か何かがいることは十分に考えられる。
ムカデのようなものがいたらヤだから、椅子から立ち上がって、手近なモノを取りのぞいてみた。
が、やはり何も居なかった。
気持ちが落ち着かない。
まあどこかに何かがいるのだろうが、害を及ぼすこともなかろう・・・と無視することにして、本に戻った。
すると、やはりまた数分もすると、同じカソコソ音がする。
しかし今回は無視して、ふり返らずに本を読みつづけた。
すると音はそのままつづいた。
気が散る。集中できない。
で、振り返ると、音はピタリとやむ。
なんだコレは?
が、相手がいないのでは何をすることもできず、本に戻った。
するとまた音がする
まるで何かにおちょくられているような気がした。イライラした気持ちが強くなった。
で、意地のような気持ちになって、音がするたびにふり返るということを、何度かくり返した。目に見えない何かと張り合うような気分になって・・・。
いい年をしてナニやってんだと、という気持ちにならないでもなかったがね。
そうしているうちにふと変なことを思った。
相手はどこかからわしを見ているのではないか・・・と。
だって、ふり返らないでいると音はつづき、ふり返ると止むのだから。
何モノか分からないが、どこかからわしをじっと観察している奴がいるのではないかと・・・。
そう思うと、なんとなく背筋にヒヤリとしたものを感じた。
い年をしてだらしないが、わしは本を持って席を立ち、自室から出て居間へ移った。早い話、逃げた。
居間で本のつづきを読むつもりでいたが、何となくそんな気持ちにならず、テレビをつけてどうでもよい番組をぼんやり眺めた。テレビに飽きたら新聞を広げた。
2時間ほどして自室に戻り、また本を開いてみた。
先ほどした音はしなかった。
その後は、数ヵ月のあいだ、あのときのような変な音はしない。
記憶もだんだん遠ざかりつつある。
思い出すとあまり気持ちがよくないので、なるべく思い出さないようにしているせいあるかもしれないが・・・。
しかし、それにしても、アレはいったい何だったのだろう。
冒頭に書いたように、大したコトじゃないし、どうでもよいコトだけどサ。
当ブログは週1回の更新(金曜)を原則にしております。いつなんどきすってんコロリンと転んで、あの世へ引っ越しすることになるかもわかりませんけど、ま、それまではね。