おにぃさんと呼ばれた

繁華街

 きのう、わしは「おにぃさん」と呼ばれた。
 念のため言っとくが、わしの年齢は20代ではない。30代40代でもない。80代だ。
 にもかかわらず「オニーサン」と呼ばれた。「鬼ィーさん」じゃないぞ、「お兄さん」だ。

 場所は地方都市の繁華街。それも、夜になると怪しげなネオンが輝きだす通りだ。
 なんだ、そういうことか・・・と分かるひとには分かっただろう。
 お察しのとおり。ひとりでも客がほしい呼び込み屋に呼びかけられたのだ。

 それがどうした? ってあんた、いま腹ン中で思っただろ?
 そんなこたァ別にめずらしいことじゃないんじゃないか。中年男ならどんなビンボー臭いヤツだって、「社長ッ!」って呼ばれるのがフツーだからって。

 そんなこたァわしだって分かっとる。わしが言いたいのは、その呼び込み屋が呼び込もうとしていた店は、単なるレストランやバーやスナックじゃない、何をかくそう、レッキとした風俗店だった、というところがキモなんだ。

 ふつうに飲み食いするとこなら、金さえ払ってくれそうなら、ジジィやババァでも呼び込むよ、「若旦那」とでも「お姫さま」とでも言ってな。しかし風俗店へ呼び込むとなると、金はもちろんだけど、金以外に必要なモノがもう一つあるだろ、って話をしてる。

 ようやくわしの言いたいことが分かってきたか。
 そうだ、風俗店へ呼び込むには、金以外に、アッチのほうにも興味というか関心というか、意欲を持ってる男でないと、いくら呼び込んでも入ってくれんだろって話。
 そして、それを持つには何が必要か?
 そうさ、ソレが必要さ。そしてソレは、億万をもってしても金じゃ買えんのだ。

 もうわしの言いたいことが分かったな。
 ヘヘヘ・・・、要するにわしはいま、ジマンしとるんだわィ。

 ジマン? 「ジマン」って「自慢」のこと?
 当たりめえだ、ほかにあるか?
 「ジンマシン」の間違いじゃないの?
 アホ、字数がちがう。ええかげんにせえ!

 へえ、ええかげんにします。
 じゃ聞きますけど、風俗店の呼び込み屋に呼び込みをかけられたのが自慢だってぇのが、そもそも分からねえ。分かるのは、それにしてもなんと情けねえ自慢だってことくらいだナ。

 おお、言いたきゃ何とでも言え。お前さんだってじいさんになりゃあ分かる。
 足腰にガタがきて、何かをしたいって意欲もなくなって、朝起きたら、今日いちんち何して過ごそうか・・・って考えただけで疲れちまうようなじいさんになったら分かる。そして、いつかはあんたもそうなる。

 そうなって、夕闇せまり始めた街で、たまたま前を通りかかった風俗店の呼び込み屋に、「お兄さん、いい娘(こ)がいるよ」って声をかけられたときの気持ちがどんなものか、分かる。
 百千の哲学書や自己啓発書を読むより、エネルギーが出るよ。
 理由は分らんが、何となく元気になる。ちょっとオーバーにいえば、「よっしゃー、わしだってまだその気になれば・・・」てな気になる。

 問題は、その元気が長続きしないことだ。
 10分も経つと、「よっしゃー、まだわしもその気・・・にゃやっぱりなれん」となってしまうのが現実だってこと。情けないけどね。
 ま、考えてみりゃ、そんなもん長続きするわけないわナ。一瞬の幻というか錯覚だわィ。

 やれやれ。
 この記事を書き始めたときから、あまりいい終わり方はできんような気がしていたが、そのとおりになっちまった。
 しょうがない。これも現実だ。

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おにぃさんと呼ばれた” に対して 2 件のコメントがあります

  1. 真水酒乱会 鯉心 より:

    そっちのプロに、まだ男であると認められたのですね。
    入ってみれば良かったのに…

    1. hanboke-jiji より:

      いやあ、言われてみれば、そう考えられないこともない
      のだけど、その時には、男であると認められただけで
      舞い上がっちまったというか、うろたえたというか、少々
      平常心を取り乱しちまって、そのまま通り過ぎてしまった。
      こう見えてけっこう小心ななんだ、わしは。

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