暗く長い旅(上)
満80歳の誕生日から、このブログを始めました。
何を血迷ったか最初のうちは “毎日更新” でした。
が、日を経ずして、それは老犬に馬車を引かせるようなものだと気づき、原則 “週2回” の更新に改めました。
そしてほぼ4年半。老犬はさらに老い、お読みいただいてお気づきのように、いまや足腰が弱ってヨタヨタ歩きです。
きっぱり辞めることも考えましたが、一度始めたことに自ら白旗を掲げるのもシャクです。せめて「週1回(原則)」の更新にしてでも、もう少し歩いてみることにしました。
この未練がましい歩きがどこまで続くか、どこでいよいよ足や腰が立たなくなってクタバルか、面白半分に見物していただければ幸いです。
2022年1月7日
人間は年をとると歯が衰える。(歯だけじゃないけどネ)
場合によっては根元から抜けて、口の中から消えてしまう。
人によってはすべての歯が消え去り、口中がガラン洞になることもある。
痛んだり、グラグラするヤツがいなくなって、すっきりする。
・・・と言えないこともないが、固形食が食べられなくなる問題が生じる。
歯がなくなると、ふつう入れ歯で代用する。だが、食べるものがおいしくなくなる。
とりわけ総入れ歯となると、2階の床が抜けて、ストンと1階に落ちたように味が落ちる。
実を言うとわしの口の中は、先に述べた “ガラン洞” にほぼ近い。
こういうことはあんまり言いたくないんだけど、格好つけてもしょうがない年齢だから有りていに書くが、数多いわが人生の失敗のなかでも、この歯への対応の失敗は最大のものの一つである。悔やんでも悔やみきれない。
人間は年をとるにつれて、生きる楽しみが減っていく。相対的に食べることへの喜びが重みをます。で、老人にとって歯の問題は最大の関心事となる。
何度も書いているが、わしは戦中戦後の食糧難時代に育ったので、虫歯ができなかった。
甘いものといえば、裏庭に実る渋柿を日に干して作る干し柿くらいだったから、虫歯の虫も甘味不足で、虫歯を育成することができなかったのであろう。
小学生のとき校医にほめられたことがあったし、成人しても一本の虫歯もない健康優良歯だった。虫歯で口が痛む悩みなど、美女にモテて困る悩みと共にわが人生には存在しなかった。
だが、禍福は糾える縄の如し。虫歯が一本もなかったことが災いの元となった。
今ほど歯科知識が普及していなかったこともあって、50歳を超えるまで歯科医の門を叩いたことは皆無だった。その必要を感じなかった。
その間に、歯周病菌が深く静かに潜航しながら、大きく育ったのである。
歯を磨くとき、歯ぐきが大きく後退していることに気づいてもいいはずだったが、まるで気づかなかった。自分の歯は健康優良歯だという潜在意識が、無意識のうちに邪魔したのだろう。
50をいくつか過ぎ、熱いものがいたく歯に沁みるようになって、生まれて初めて歯科の門をくぐったときには、時すでに手遅れだった。
親に先立つ不孝は最大の親不孝だという。
歯が亡くなるのも同じようなものだ・・・とつねづね思いながら生きているせいか、わしは歯に関するコトに敏感だ。
先日も、とある有名人が書いたエッセイ集に、歯に関する珍しい話が出ていて、世の中には予想を超えたコトが起きるものだとびっくりした。
実はその驚きがこの記事を書かせている。
くだんのエッセイ集は、半世紀も前に出版されたもので、今では手に取ることは難しくなっている。しかし目ン玉が飛び出すような話なので、次回に紹介したいと思う。
当ブログは週2回の更新(月曜と金曜)を原則にしております。いつなんどきすってんコロリンと転んで、あの世へ引っ越しすることになるかもわかりませんけど、ま、それまではね。