みんなちがってみんないい

クセも人さまざま

 当記事のタイトルは、夭折詩人金子みすずの詩から借りたものだが、詩論を展開するつもりはないよ。
 ”詩のような” というと、何やら品のいい花の香りがするが、そんなものを期待されると困る。わしのことだ、ハナつまみ寸前の生活臭ふんぷんの話をする。

 人間は誰でも一つや二つ、毎日の決まりごとというか、毎日かならず行う “生活習慣” を持っているのではないだろうか。

 例えばわしは、朝4時~5時のあいだに起きると、まずトイレに入って便座にすわり、夜のあいだにためこんだ水分を放出しながら、眼球運動をする。左右、上下、ぐるぐる回し。そのあと、こんどは指回しを数分する。両手5本の指先を合わせて、親指から小指まで順にぐるぐる回す。それが終わる頃には完全に目が覚める。そこから一日が始まる。ま、車のスタートボタンみたいなものだナ。

 朝のトイレ参りというと、いまは亡き長兄も、朝起きるとまずトイレへ直行したらしい。そして小1時間ほど出てこなかった。
 1時間もトイレの中で何をしていたかというと、朝の勤行である。
 間違える人はいないと思うが、勤行といってもむろんお経をあげるわけではない。場所が場所だし、持って入るのは経典ではなく、インクの匂いのする朝刊である。つまり生理現象の処理と併行して、その日の新聞の処理も行ってしまうのだ。
 それが、例えば、長兄の生活習慣だった。

 こういうのは “生活のクセ” と言い換えてもいいかもしれない。
 こういうクセは、多かれ少なかれ人はみな持っているのだから、そのクセ自体をあれこれあげつらうのは控えるべきだろう。だが長兄のこのクセは、家族(妻や子供たち)に嫌われた。ありていに言えば非難された。
 家族全員の共有家財であるべき新聞が、許諾なくインク以外の匂いをつけ加えるからではない。それを問題にする者は女性連中の中にいたらしいが、大きな勢力にはならなかった。一定の時間がたてば、どのみちインクの匂いともども消えるからだ。

 問題になったのは、長兄がいったんトイレへ入ると、小一時間は絶対に出てこないことにあった。
 トイレは、家族全員が平等に使用する権利を有する設備である。戸主だからといって独占は許されない。にもかかわらず、他の家族が使用の必要をうったえても、長兄はなかなか応じなかったらしい。

 いま挙げた例などどこにでもありそうだが、えッ、というような、ずいぶん変った生活習慣を行っている人もいる。

 だいぶ前に知人から聞いた話だが、ある40男は毎朝 朝食前に筋肉トレーニングをやっていた。それ自体はべつに珍しくもないが、珍しいのはバーベル代わりに自分の子供を持ち上げていたことだ。バーベルを買う費用を節約したわけではない。彼なりの論理的理由があった。

 彼は忍者に興味をもっていて、たまたま読んだ関連本のなかに、次のようなことことが書いてあった。
 むかしの忍者は、家の土塀などをかるがると飛び越える驚異的跳躍力を持っていたが、その跳躍力を身につけるために植物を利用した。比較的成長の早い木を庭に植えて、その木を飛び越える練習を子供のときから毎日やる。木のてっぺんに触れないように飛び越す訓練を、1日も欠かさずにつづける。そうすると木の成長と共に、やがて2メートル以上跳べる能力が自然に身についたという。

 この話から、くだんの中年男は植物のかわりに、成長ざかりの自分の子供を持ち上げることを思いついた。息子の成長とともに、彼の筋肉も自然にかつ驚異的に成長するにちがいないと。なるほど頭がいい。・・・かどうか分からん。

 それにしても、たまになら子供も “高い高い” をしてくれたと勘違いして喜んだかもしれんが、毎日となると嫌がるときもあっただろう。3歳ごろから小学校に入学するまでやったというからね。その間、どうなだめすかし、あるいは脅して説得し、忍者式トレーニングに協力させたのか、わしはそっちの方に興味がある。ま、どうでもいいけど。

 わし自身が直接見た、ちょっと変った生活習慣をもつ男のことを、最後にもう1つ紹介する。
 糖尿病治療の一環として、毎日ほぼ同時刻にウォーキング&ジョギング(以下「ウォー/ジョグ」と略称)をやっていることは何度も書いているが(参照!→「門柱の上の猫」)、その途上でときどき出会ったある男は、おかしな習慣をもっていた。

 そこは最寄り駅から住宅地へと入っていく道の一つで、わしはその道をまいにち夕刻時に駅方向へむけてウォー/ジョグする。で、老若男女さまざまな通勤がえりの人たちとすれ違う。その中のひとりに、すれちがうたびに毎回、口の周りを筆で白い絵の具をぬり立てながら歩いている30前後の男がいた。

 最初に見たときは頭のおかしい人かと思った。しかし “口に絵の具塗り行為” 以外は、服装も態度もきちんとしている。背広を着たごくふつうのサラリーマン風の男である。気がふれている人間のようには見えない。

 何回めかで分かった。筆だと思ったのは歯ブラシだった。絵の具だと思ったのは歯みがき剤だった。つまり彼は通勤がえりに歯を磨いていたのである。

 毎日出会うわけではなかったが、この男と出会ったときはいつも歩きながら歯を磨いていた。どういう狙い、あるいは理由、もしくは便宜があったのか分からない。半ボケのわしの頭では想像もつかない。

 そういえばどういうわけか最近は出会わなくなった。残業の多い部署に移動になって帰宅時間が遅くなったか、転勤で職場自体が変ったのかもしれない。

 ともあれ人はさまざまである。
 迷惑とか被害をこうむるのでない限り、お互いの少々の違いは大らかに認め合うのが平和の基本だろう。
 国と国の間でも・・・。

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