席をゆずられて・・・

電車の中

 きのう用があって、久しぶりにバスと電車を乗り継いで、都心へ出た。
 たまに目先が変わるのも、気分が変わっていいものだ。

 話がちょっと飛ぶが(実は繋がっているんだけど)、日本を訪れた外国人が日本の印象を訊かれてよく口にするのが、「街がきれい」「人が礼儀正しい」「みんな親切」・・・といった言葉である。

 だが、一方でこういう声もちょくちょく聞く。
「意外だが、日本の若いひとは、電車やバスで、老人や妊婦に席をゆずらない。わたしの国では考えられない・・」

 その通りだと思う。それは当事者である日本の老人たちが誰よりもよく知っている。つまりそのひとりがわし。

 だが少しずつだが変わりつつある。以前に比べれば席をゆずってくれる若い人が、わずかだが・・・蚊の涙ほどだが増えてきたような気がする。。
 わずかでも、この変化は日本のためにも、わしのためにも良いことだと思う。

 しかしね。電車やバスで席をゆずられると、それはそれでちょっと面倒なこともあるの。

 たとえば、へんにしっかり風を装ってるけど、実体は2本の足のうち1本を棺桶に突っ込んでいるのでバランスが悪く、かろうじて車体のゆれに耐えている爺さんが電車に乗っていたとする。見かねて若いひとが席を譲ってくれたとしよう。

 だがその爺さんはたまたまあと1駅で降りる。そのことを言って、席をゆずることを申し出てくれたことに感謝しつつ、辞退する。すると、立ってくれた人は気まずそうな顔になって、立ったばかりの席に居心地悪そうに再びすわる。あるいはへんに意地をはって座ることを強要する・・・みたいなヘンテコな場面が生まれることがたまにある。

 そんなヘンテコ舞台の、ダブル主役のひとりになるのはメンドーなので、わしはあと1駅だろうと半駅だろうと、立ってくれたら即、ありがたく礼をいって座ることにしている。そうするほうが、勇気を出して立ってくれた若い人へのいちばんの感謝の表現になり、礼儀にもなると思うからだ。

 だがそれだけではない。ときどき次のようなことも起きる。
 たとえばわしが席をゆずられたとする。ふつう、ゆずってくれた人とわしとの居場所は入れ替わる。相手は座ったわしのすぐ目の前に立つことになる。

 だが時々だが、ゆずってくれた人が、立った足でわしの前から離れていくことがある。
 なぜか。
 わしによけいな気遣いをさせないためだ。・・・と思う。
 席をゆずってくれた人がすぐ目の前に立っていると、ゆずられた方はやはりなんとなく落ち着かない。相手に立たせておいて、自分だけカバンから本を取り出してゆっくり読むなんてのは悪いような気がする。ましてや、ポカンと口を開けて眠ることなどできない。
 席をゆずられた人に、たとえばそういった気遣いをさせないように、ゆずった人はその場からから離れてゆくのだ。

 一方、ゆずられた側のほうも、離れていった人のそうした気遣いが分かるので、無意識のうちになんとなくその人のあとを追う。と、なぜか相手もひょいとこっちの方をみて、運わるく目が合ってしまうことがある。

 その時どんな顔をしていいか分からない。ちょっと困る。会釈する・・・というのはこの場合なんとなくヘンな感じだし、といって目が合っているのに知らん顔してるというのも、さっき示してくれた厚情に対して申し訳ない。会釈したようなしないような、なんともアイマイな感じで目をそらすことになる。オナラしたようなしなかったような気分があとに残る。

 こういうある意味でコッケイな場面が生まれるのも、日本人のある種の国民性ゆえであろうかと思う。

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席をゆずられて・・・” に対して 2 件のコメントがあります

  1. むらさき より:

    ほお~♪
    席を譲ったらその場を離れる心遣い・・・
    さすが~♪
    私も今度からそうしよう♪
    また、一つ賢くなった♪
    ・・・といっても、私もボチボチ席を譲られる年齢でした(笑)

  2. Hanboke-jiji より:

    むらさきさんはまだ席を譲られたことないのですか。
    若~い!

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