抜くべきか、抜かざるべきか、それが問題だ!(下)

(この記事は連投3投目。1投2投 も読んでね。でないと、いきなり闇夜に宙吊りされたみたいで、ワケ分からんよ)

 ・・・というような事情もあり、これまで自分の歯を残すことにこだわってきたわしだが、こう何本も同時にグラグラしだすと、やはり問題が生じる。

 たとえば、噛み合わせに狂いが生じて、上の歯と下の歯がしょっちゅう喧嘩する。そのたびに「イタタ! イタタ!」となる。

 口の中でやたらそんなイタいケンカなどやられては、食事を楽しむムードなど消し飛ぶ。
 さりとて、口の天井を蓋いつくす総入れ歯にしたら、食事の味けなさは想像にあり余って天井を突き抜ける。
 だからといって、食事のたびにその総入れ歯を外し、コンニャクみたいな口でふにゃふにゃ食するなんて図は、あまり想像したくない。

 自分にとって切実な問題になると、ちゃらんぽらんな人間でもけっこう真剣に考えるものらしい。
 抜くも地獄、抜かざるも地獄・・・となって、わしはワラをもつかむ思いで第三の道はないか、と探った。
 その結果、老人にやさしいと評判の別の歯科医を訪ねて、当方の事情と希望を訴えた。

 するとその歯医者は、
「わかりました。ギブスをはめましょう」
 パジャマの穴にボタンをはめるように、即答したね。
 わしはポカンと口をあけたよ。ギブスと言われて、白い石膏で固めた足や腕しか思い浮かばなかったからね、わしは。

 しかし実際は、当らずとも遠からずだった。医者はグラグラする歯を、歯科用セメントで固定したのだ。
 その結果、上の歯と下の歯はひとまずケンカをやめた。
 それでとりあえずほっとしたが、これは結局のところ一時しのぎだった。この歯科用セメントは、数週間で疲労してひび割れし、剥がれたからだ。

 そこで再びくだんの歯科工務店へ行って、再度セメント工事を施工してもらったのだが、結果は前回をコピペしたかと思うくらいまったく同じだった。同日数を経てまたひび割れて剥がれた。

 いくら半ボケのわしでも、三度は同じ愚をくり返さない。

 工事は諦めて別の手を探した。
 ところが探している間に、想定外の事態が生じた。
 当事者である前歯らが、1本だけ残して相次いで勝手に足抜きして、主人の努力に後ろ足で砂をかけるようにして去って行ったのである。(残った1本は医者に抜いてもらった。)
 ひょっとすると、恩知らずではなく、主人思いの気持ちからした行為かもしれんがね。ま、そこは子のこころ親知らずだ。

 蛇足だが、「色気より食い気」という言葉があるだろ。
 ふつうは見栄より実利をとる比喩として使うが、ときに思春期前の食べ盛りの少年少女に対して、比喩ではなく文字通りの意味で使うこともある。
 その言葉が、老衰期中の爺さんにもそのまま当てはまる、ということを、今回わしはこの “入れ歯ハムレット事件” で気づいたのであった。
 何とはなく愉快であった。

ポチッとしてもらえると、張り合いが出て、老骨にムチ打てるよ

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