要するにどうしたいのだ?(その1)

 
 いつだったか、絵本作家の佐野洋子(故人)の本を読んでいたら、次のような一節に出くわした。
(手元に原典がないので、わしの頭の中にある記憶をたどって書く。印象的な話だったのでちゃんと覚えているつもだけど、言葉づかいなどは多少ちがうかもしれない)
 
 長年の付き合いになる初老の男友だちが、そのころ佐野にちょくちょく言ったのだそうだ。
「アノネ、僕、性欲はあるんだけど、精力がないの」
 女の佐野には男のことはわからないので、テキトーに聞き流していたのだが、あまり同じことをくり返し言うので、
「はっきりしなさい。要するに、やりたいんだけど立たない、って言いたいの?」
 ときくと、
「うん、まあ、そうとも言えるけど、そうではないとも言える」
「はっきりしないわねえ。それ、どう違うの?」
「うすくスライスしたマンゴーみたいに違う」
 などと答えて言うことがあいまいだ。そこで佐野は質問のしかたを変えてみた。
「それって、精力はあるけど性欲がない、というのとは違うの?」
「それは違う」
「だから、どう違うのよ」
「ひとことで言うのはむずかしいけど、たとえていえば、腹を空かせた猫がネズミを襲うのと、お腹いっぱいでも、ネズミを見ると飛びかかる猫との違い・・・みたいなものかな」
 佐野は、男の言うことは、腐った水の中に住むボウフラの気持ちがわからないのと同じくらいわからない、とたしか書いていた。
 
 以上はわしの記憶の中にある佐野洋子の話。

 わしはまあ男だし、年は初老を超えているけど、この男の言っていることは、女性の佐野よりはわかる。

 が、わからないところもある。なぜその男は、そんなことを長年付き合っている女友だちにわざわざくり返して言うのか、という点である。

 もしわしが仮に佐野洋子だったら、先の問いに続けてこうも訊いただろう。
「要するにあんたは、わたしとセックスがしたいの?」
「う~ん」
「したいんだけどナニがあんまり元気じゃないから・・・って言いたいのとは違うの?」
「いや、そんなことは・・・」
「ひょっとして、あんた・・・付き合いの長いわたしに一度も手を出さないことの、言い訳をしてるんじゃないわよね?」
「いや、そういうわけじゃ・・・」
「もしそうだったら、そんなよけいな気は遣わないで!・・・メンドー臭いから」
「なんか違うんだけどなあ」
「じれったいわねえ。はっきりして! 要するにあんたは何が言いたいの?」

(あすは、同じ記事タイトルで別の話を書きます)

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