爪先にもヤツは待っていた

 前回、「鼻先に何が待っていたか」と題して、最近のわしの生の体験を記事にしたが(同記事はこちらから)、ほとんど同じ経験を2年ほど前にもしていたことを思い出した。ついでだから今回は続編としてそれを書く。題して「爪先にもヤツは待っていた」。

 夏の終わりだった。法師ゼミの声がうるさく耳にまとわりついていたのを思い出す。

 いつものコースをジョギングしていて、信号のある小さな交差点に差しかかった。信号は青だったのでそのまま渡ろうとしたとたん、イジワルでもするように点滅しはじめた。だが無視して足を止めなかった。

 コースは信号を渡りきるとすぐ左手へ折れる。そこでわしはチョンボをした。まっすぐに行かずに左斜めに行って、距離を縮めようとしたのである。三角形の1辺は他の2辺より短い、というヤツを利用したわけネ。

 その車道から歩道へ上がるとき、10センチくらいの段差があった(→ 冒頭の画像参照)。
 そのことは分かっていて、十分足を上げたつもりだった。しかしじっさいは十分ではなかった。

 信号が点滅していたので多少焦りもあった。ややスピードを上げた足の爪先を歩道の肩に引っかけた。突風にあおられた立て看板が倒れるように、バタンと激しく前方へ倒れた。

 とっさに両手を前に出したが、倒れる勢いのほうがつよく、顔を歩道の地面にイヤというほどこすりつけた。

 そのときわしは思わず大きな声を上げたらしい。
 そこはちょうどクリーニング屋のまえで、客としてきていた主婦のひとりが、店のなかから飛び出してきた。
「大丈夫? 大丈夫ですか?」

 こういう時というのはおかしなもので、ほんとは大丈夫じゃないのに、反射的に「大丈夫!」って言ってしまうんだよね。
 このときのわしもそうだった。かなり激しく顔を地面にぶつけたし、手のひらや、短パンを穿いていたから膝も擦りむいて赤くなっているのに、
「大丈夫です・・・いや、ほんとに大丈夫ですよ」
 と元気な声を返して、そのまままた走り出したのだ。その背に、
「ほんとに大丈夫ですか? 顔から血が出てますよ!」
 という主婦の声が追いかけてきたけど、わしはそのまま走りつづけた。
 
 いまこうして振り返ってみると、いい年なのにアキレるね。
 これで脚の骨でも折って動けなかったら、いくら「大丈夫!」と叫んでも、単なるカラ元気かヤセ我慢でしかなくて、まあこっけいの見本だけど、実態はそれと同じだよねぇ。強がり、ミエっ張り、カッコつけ・・・。

 80歳を超えてもコレだからね。いったい何をやってるんだろうと思う。まあ男ってバカな生きものだワ。

 このとき付けた顔や膝や手のひらの傷は、治るのにずいぶん時間がかかった。半年くらいかかったんじゃないかナ。年をとると、傷口が治るのにも時間がかかるの。動作が遅くなるのと同じ。

 ともあれ「一寸先は闇」ってヤツは、鼻先だけでなく爪先にもにもヘソの先にも・・・つまり人生どこにもでひそんでいるんだワ。

 そんなこたァ今さら言われなくても分かってる、って?

 分かっててもやってくるんだって、この「いつ何が起きるか分からない」というヤツは・・・。
 なぜなら、コイツは誰の人生にも必ずくっ付いているお供だから。

        お知らせ
当ブログは週2回の更新(月曜と金曜)を原則にしております。いつなんどきすってんコロリンと転んで、あの世へ引っ越しすることになるかもわかりませんけど、ま、それまではね。

ポチッとしてもらえると、張り合いが出て、老骨にムチ打てるよ

にほんブログ村 その他日記ブログ 言いたい放題へ
(にほんブログ村)

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です