感情の老化を防ぐ５つの習慣（その２）

　前回に書いた某週刊誌の新聞広告「感情の老化を防ぐ５つの習慣」のなかに、もう一つ腹の立つことが書いてあった。（前回の記事はこちらから）
　
　いわく、
「脳トレより性を楽しんでアンチエイジング」
　というのがソレ。
　
　この記事を書いたライターは、オンナのムネや生アシを見ただけで生ツバが涌くような若い男にちがいない。（オンナはオトコの何を見たら生ツバが涌くのかわしは知らんから、女性ライターは除外）
　
　たしかに、老いて脳のハタラキが弱くなった老人たちのあいだで、脳のトレーニングとやらがハヤっていることは知っている。そのためのツールもいろいろ出ているのも知らないわけではない。

　しかし、脳トレよりセックスを楽しんだ方がアンチエイジングにいい･･･などと簡単に言うヤツは、老人や老人がおかれている状況がどういうものかを、何も知らないで記事を書いているテキトーなヤツだ。

　知らなきゃ調べるなり勉強するなりするのが仕事なのに、そういう大切なプロセスはすっ飛ばして書いている。パソコンの横にビールの空き缶を並べ、テレビのゴルフ中継にチラチラ目をやりながら･･･。

　週刊誌にかぎらずマスコミには、わしも一時期その世界にいたから知っているが、そういういい加減なヤカラが多い。
　
　そもそも “セックスを楽しめ” と気軽に言うが、脳トレとちがってセックスを楽しむには相手がいる（異性だろうが同性だろうがね）。
　それもマジメにやるなら生身の人間が必要だ。本とかアプリを小遣い銭で買えば簡単にやれる脳トレと、同格に扱えるシロモノではない。「コメよりトーフを食べてダイエット」みたいに気安く言ってもらっては困る。
　
　たしかに年をとっても性欲はある。
　以前、４回にわたって高齢者の性をとりあげたときに詳しく書いているが、年齢とともに弱くはなるものの、専門家が研究したデータによると、意外に多くの高齢者が性に関心を持っている。（参照 →『残り香にゆすぶられて－高齢者の性－』はこちらから）
　
　人によっては、老いてもなかなか消えない性の残り火に悩んだり苦しんだりしている人もかなりいる。なぜかというと、脳トレみたいにやる気さえあれば簡単にやれる事柄ではないからだ。
　いまの日本は、老人が自然に性を楽しめる環境ではない。
　老後における男女の性意識の差もあって、特に男性の高齢者はそう簡単にセックスを楽しめる状況にはない。
　うっかり手を出そうものなら “ひひ爺ィ” という矢が飛んでくるし、ヘタに手を出したらたちまち “セクハラ” の実弾が飛んでくる。
　
　まあ、家族のいないときにこっそりそのテのサイトにアクセスして、生ツバを呑み込んでいるぐらいが関の山だ。そしてある日とつぜん多額の契約未納金の催促状が届いて、青くなるというオチが付がつく。
　
　そういう実態を調べずに、あるいは知っていても無視して、先の週刊誌の記事は書かれている。金もうけのために。
　
　･･･と、まあ、カネはなくてもヒマのあるわしは、そんな感想をもったわけだ。