うるさいものはいろいろあれど(2)―蚊の教え―

 前回、「うるさい」もののひとつとしてカミさんの小言をあげたが、カミさんの小言以外に、もう1つわしにとってうるさい上に腹立たしいものがある。
 蚊の羽音である。前回に触れたプーッではなくて、プーンという蚊が飛ぶ音。
 
 夜、ベッドに入っていざ寝ようとするときに、暗闇の中にプーンという蚊の音がすると、もう眠れなくなる。

 音のする方向をねらって闇の中で両手をパチンと叩き、迎撃するが、戦果があったためしがない。おそらくアサッテの方向へ手を打っているのだろう。今までわしが人生でやってきたように。
 
 だからといって放置すると刺される。刺されるのはイヤなので、起きて灯をつけ本格的に戦おうとするが、そのときにはもう敵の姿は影も形もない。
 
 仕方なく灯を消して再びベッドに入る。が、しばらくするとまたプーンと空襲警報が鳴る。再度パチンと狙撃弾を放つが逃げられる。
 
 こうなったらもう完全に眠れなくなる。イライラしながら時間を過ごすことになる。
 
 ところがである。最近、この夜間空襲にやや異変が生じた。
 空襲警報は鳴らないのに、いきなり実弾が落ちてくるようになったのである。
 夜、蚊の羽音はしないにもかかわらず、ふとんから出している腕や足がとつぜん痒くなるのだ。錯覚ではない。蚊に刺されたときと全く同じ痒さだし、じっさい明りをつけて確かめてみると、まさに蚊の刺されたときと同じ弾痕が残っている。
 
 最近の本ものの戦闘機は、敵の探知レーダーをかいくぐる性を備えているという。時代の変化とともに、同様のステルス機能を獲得した蚊が出現したのだろうか。
 ・・・なんて冗談言ってる場合じゃない。被害はリアルなのだ。
 じっさい不思議だった。これはいったいどういうことになっているのか、とマジメに考えたが答えは出てこない。
 
 あるとき、たまたまカミさんにその話をした。
 すると彼女はべつだん驚きもせず、
「そんなの不思議でもなんでもないわ。あなたの耳が老人性難聴になったのよ。最近あなた、食べものが気管の入りやすくなって、よくむせるでしょ。それといっしょ」
 
 目からウロコ・・・じゃないな、耳から耳クソが落ちた。
 なんで今までそんなことに気がつかなかったのだろう。
 年をとると耳が遠くなるのは特別のことではなく、周辺にゴロゴロ転がっているごくごく普通の現象ではないか。
 やれやれ、またひとつ人間の機能を失ったか。
 いやちがう。またひとつ老人力を獲得したワイ。
 ・・・と思うことにしよう。

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