不眠症にはコレで戦え

不眠症対策

 誰にでも、
「○○ができなくてつらい」
 という状況がある。

 ○○のところに入る内容は、もちろん人によってさまざまだ。

 たとえば、黙っていても毎日何百万円という金が入って来るが、使い道がなくてつらい、とか、毎日異性から熱烈なラブレターが来るが、すべてに返事を書く時間がなくてつらい・・・とかいうのは、わしではなく誰かさんの話。
 
 わしにとってつらいのは、ときどき「夜眠れなくなる」ことである。
 とりわけ翌日に何か重要な予定が入っているとき。寝不足になるとマズイと思うものだから、焦りが生まれ、一層眠れなくなる。イライラし、モンモンとする。
 
 そうしている間にも時間はどんどん過ぎていく。つまり眠る時間が減っていく。翌日の体調がますます心配になる。。
 
 ふだんは聞こえない置時計の秒針の音が、まるで脅すように大きな音で耳にひびく。まるで鞭でピチピチ尻を叩かれているようだ。
 
 そんなわしを神はアワレとおぼしめしたか、何日かまえ、某テレビがかなりの時間を割いて不眠症関連の番組を放送した。
 これは見なくっちゃーと、わしはメモ用紙を用意して、好きなアニメを見る子供のように、始まる15分前からテレビの前に座った。
 
 だが放送内容のほとんどはすでにわしの知っていることだった。
 ただ、一つだけ、初めて聞く言葉があった。

 それは、「眠れないときは眠ろうとしないで、逆に、できるだけ眠らないようにするとよい」ということだった。

 仮に眠気が催してきても、きるだけ眠気に抵抗する。
「眠らないぞ、眠らないぞ」
 と、ひたすら眠気にタテ突くのがコツだというのである。

 小・中学生のころ、昼めし後の1時限目の授業が眠くてたまらなかった。
 眠らないよう必死にがんばるのだが、頑張ればがんばるほど逆に地球の重力を刺激するらしく、抗しようもなくまぶたが降りてきた。午後の時間は毎日が地球との戦いだった。
 
 その逆をやればよい、とテレビは教えてくれたわけだ。
 眠れないときに眠ろうとするから、よけい眠れなくなる。
 眠れないときには眠ろうとしないで、逆に眠らないようにしようとすればよいのだと・・・。
 
「逆もまた真なり」ってわけで、ピンとくるものがあった。
 
 で、早速その夜、試してみた。
 ベッドに入ったとき、今夜はゼッタイ眠らないようにしようと思った。
 どれだけ寝ないでいられるかに挑戦しようと思って、布団に入った。
 
 ・・・ところまでは覚えている。
 つぎに記憶にあるのは、目が覚めたときだ。
 つまりすぐ寝入ってしまったのである。
 いつものように眠りに入るまで、布団のなかでモンモンとすることはなかった。
 
 たまには “ひっくり返し” てみることも、人生には有効だ。
 
 ・・・と思ったけど、有効でない日もあることがその後わかった。
 やっぱり不眠症は強敵だねぇ。

 

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