80爺さんがヤンキー少女にいじられた(中)

 いま、世をのし歩くヤクザのようなコロナ菌からは免れているのに、思いもしなかったヤンキー少女のような雑菌に捕まって「尿道炎」になり、泌尿器科の門を叩く仕儀になった経緯を前回に書いた。今回はその続き。(前回はこちらから)
 
 訪ねた医院は、明治か大正あたりに生まれた親父の後を継いで、そのまま診療所を続けているような小さな町医だった。

 注意書きなどが壁にベタベタ貼られている待合室や診療室は、その貼り紙の下から昭和の民家のおもかげを覗かせている。

 暖房もいわゆるエアコンではなく、各部屋に電気ヒーターが置いてある。しかし室内は春のようにポカポカと温かく、やはりどこからかエアコンの温風が吹きこんでいるのかもしれない。
 ともあれ小さいが全般に清潔で、悪い雰囲気ではない。
 
 看護師は60歳前後の女性がひとり。
 受付けと経理と雑用を兼ねるのは50代後半の品のいい女性。おそらく医師の奥さんだろう。
 全従業員は、医師を別にすればこの2人だけ。簡単明瞭。

 かんじんの医者は60歳くらいか。無造作にはおった白衣の前ボタンを外したまま、背もたれのない丸椅子に浅くすわって、やや前のめりになりながら診察する。
 
 近ごろの医者は、患者よりパソコンを診察しているのではと思うほど、液晶画面のほうばかりに顔を向けているのが定番だが、この医者はパソコンを見なかった。・・・というかそもそも机の上にパソコンがなかった。
 
 まず看護師に血圧を計らせながら症状を訊いた。

 若い患者なら(特に若い女性は)、尿道炎のようなしもがかった部分の異常を話すのは恥ずかしがるかもしれないが、80過ぎの爺さんにとっちゃあ別にどうってことはない。堂々と・・・なんてべつに胸を張ることもないけど、それまでの経過をくわしく述べた。
 
 医者は黙って話を聞いたあと、「典型的な尿道炎だな」とつぶやくように言い、わしの顔を見ないで「なにか思い当たるフシは?」と訊いた。
 一瞬、はぁ? という顔をして見せたが、むろん医者が何を訊いているのかすぐわかった。いえ、ありません、と簡単に答えた。
 
 ところが医者はそれで引き下がらなかった。さらに突っ込んで具体的に訊いてきた。
「最近、不衛生な性行為みたいなことは?」

 この病気(尿道炎)が性行為によって菌が感染するケースが多いことは知っていたが、それでもわしは最初、医者がジョークを言ったのではないかと思った。医者だって人間だ。退屈なルーチンワークを続けていると、たまに息抜きがしたいだろう。

 だが顔をみると、いたってマジメな様子だった。冗談を言った顔ではない。
 そのときの当方の答え方がややブゼンとなったのは、「わしの年齢の患者にソレを訊くか?」という思いがあったからだ。

 それに医者が口にした「不衛生な性行為」という言葉が、なぜか「不純異性交遊」というニュアンスで聞こえたこともある。
 なぜそう聞こえたか分からない。が、いま思うとヘンだ。不純異性交遊というのはふつう、10代の男女行為について使われる言葉だ。どうかしてる。

 いずれにせよ、医者の言葉についブゼンとなったのは大人げなかったと思う。
 人間も80を超えれば、およそ何を言われても、仮に思いっきりシッポを振ってみろと言われても、端然かつ淡然・・・ひょうひょうと応じるようであらねばならぬと思うからだ。

 人の道は長く遠い。

 今回もつい長くなった。続きは次回。
 

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