警察官に護衛された(上)

警官

 今年84歳になるが、いくつになっても、”人生で初めての経験” というものはあるらしい。

 先日、わしら夫婦に、警察官の護衛がついた。
 もちろん人生初体験。

 日本で護衛がつくというと、まず皇族など高貴な人々、政財界のトップにいるお偉方、そしてVIP級の外国人・・・といった辺りを思い浮かべる。

 あるいは逆に、なにかの犯罪を犯した凶暴な人物・・・といった人間も連想する。

 前者にはもちろんわしらには縁もゆかりもホコリもないし、後者もまあ懇意なひとはいない。

 にもかかわらず警察官の護衛がついた。
 
 何度も書いているが、わしら夫婦は2年ほど前に、東京から近県の田舎町へ引っ越しをした。
 それまで住んでいた所には30年近くいたので、日常使う銀行口座はその地にある某金融機関の支店につくってあった。
 
 引っ越したときに、この口座もいっしょに引き連れていけばよかったのだけど、移転時のネズミの手も借りたいくらいの忙しさに追われて、ついそのまま置いてきてしまった。
 ATM(現金自動預け払い機)がどこにでもある当今、口座の支店が遠く離れた所にあっても、べつに生活に支障が生じるわけではない。
 
 ところがそのうち、なんとなく気持ちに変化が生じた。
 何かで口座情報の記入を求められるたびに、取引き銀行の支店名に、現住地から遠く離れた地名を書き入れることに、何とはない落ち着かさなを覚えるようになったのだ。
 
 現実問題としてはなにも不安になる理由はない。純粋に気分の問題。
 ひょっとすると、高齢者であることとナニか関係があるのかもしれないが、とにかく眠ろうとしている時に、しつこく耳にまとわりつく蚊の羽音のように気になった。
 で、この蚊の羽音を取り除きたいと思っていた。

 その機会が先日おとずれたのである。
 用ができて旧住所地へ出かける必要が生じたので、ついでにこの蚊も追い払うことにしたわけだ。
 
 まず、いま住んでる所に新しい銀行口座をつくった。ここに、従来の口座に入っている金を全額移動することにした。
 
 銀行の窓口へいくと、解約した金はどうする予定かと訊く。
 そんなことまで言う必要があるのかと思いながらも、現金で受け取ってそれを近くにある別の銀行のATMへ入金すると言うと、ふいに申し訳なさそうな顔をした。
「お客様、お振込みではなく、現金でのお支払いになりますと、少々面倒なことになりますが、よろしいですか」
「えッ、 面倒? どんな?」
 事情を聞くと、思いもしない、次のような答えが返ってきたのである。
                      (つづきは次回)

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当ブログは週2回の更新(月曜と金曜)を原則にしております。いつなんどきすってんコロリンと転んで、あの世へ引っ越しすることになるかもわかりませんけど、ま、それまではね。

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