マスクは顔のパンツである
本記事のタイトルに掲げた少々エロチックな言葉は、上等な品性に欠けるわしが思いついたものではない。
過日、某大新聞の紙上で、とある女史が言っているのを見たのである。ただ、それが誰だったか思い出せない。かなり名の通っている人だったように思うが・・・。
自慢じゃないが、近ごろますます、固有名詞が突然どっかに遁走する頻度が多くなった。
目の前に年齢を突きつけられてるようで気分はよくないが、年の進行は止めるわけにいかないから致し方ない。昨日も野菜の「ブロッコリー」が急に出てこなくなって半日イラついた。その前は衣類の「キルティング」だった。なんとも情けない。
話を戻すが、「マスクは顔のパンツである」という言い回しは、ともあれ表現としてはなかなかインパクトがある。
去る3月13日から、いわゆる “マスク解禁” になった。
「解禁」という言葉のせいもあると思うけど、わしなど何となく気が軽くなる。
だが、逆の気分になる人もけっこういるらしい。
テレビが報じていたが、マスクを外すことに「抵抗がある」と思っている人がかなり沢山いる。
考えてみれば、たとえばこの3月に中学や高校を卒業した生徒たちは、学校に入学した当初(2020年4月)からずっと、クラスメートたちの顔を半分しか見てこなかったのである。
ちょくちょく一緒に食事をするような仲になった友だちを別にすれば、クラスで共に学んだ大半の級友の顔を、完全に見たことが一度もないまま学校を卒業していくのだ。
そういう人たちが人前でマスクを外すことに抵抗感を覚えるのは、何となく分かる気がする。誇張ではなく文字どおり公けの場で裸になるような、さらにいえば人前でパンツを脱ぐような気持ちになるのであろう。「マスクを外す」という行為と、「パンツを脱ぐ」という行為にある微妙な心理的類似性が、妙に生々しく共振する。まさに「マスクは顔のパンツ」なのだ。
そうなると、性根がひねくれているわしなど、逆に「マスク解禁」を内心ひそかに喜んでいる人も中にはいるのではないだろうか、と想像する。
露出狂の話ではない。顔ぜんたいを見せた方が魅力的な人たちのことである。
形の良い鼻や口や顎の線をもち、それが目や眉や額といった顔の上半分とバランスよく配置されていて、全体で見たほうが美人度もしくはイケメン度が一段と上がる人たち。
これまではコロナのせいで大っぴらに全開できなかったが、これからは・・・。
これをもう一度ひっくり返すと、「マスク解禁」が嬉しくない人、喜べない人もいるだろう。顔の下半分に自信のない人たちだ。あけすけに言えば顔の下半分の出来があまり良くない人たち。これまでその “不都合な” 部分は、誰はばかることなく堂々と隠すことができていたのだが・・・。
現実は、この手のタイプの人のほうが多い気がする。
こちらのケースは、わし自身じっさいに一度ならず目にしている。
たとえば通いつけのスーパーでちょくちょく出会う、とある品のよい中年の女性がいる。
目元が涼やかなな人で、ちょっとわしの目を惹いていたが、あるとき路上で知り合いと話をしている場面に遭遇した。
そのとき彼女はたまたまマスクを外していた。
一瞬別人かと思った。それほど受ける印象がちがった。鼻や口や顎のラインがどことなく卑しげで、涼やかな目の印象など吹き飛ばしていた。
話はちょっとずれるが、カミさんの話によると、コロナのおかげでちょっとした外出時にお化粧をしないで済むのは助かる、と思っている女性はけっこう多いそうだ。
目の辺りだけちょこちょこっと触わっておけば、あとはマスクのおかげで世のなか通るらしい。要するに深く関わらるのでなければマスクで実体を誤魔化せる。
・・・ということは日本の政治と同じだ。
今の岸田政権も、元総務大臣・高市早苗の例など、同じことをやっているのが明るみに出始めているが、このチョコチョコ隠しを最も露骨にやったのが安倍政権だ。
例の “かけ・もり” 問題で謀らずも白日に晒されたが、都合のわるいアザやアバタは・・・腐ってウジ虫が湧いているような傷口さえも、マスクの下に押し込んでおけば世のなか通っていける。特に日本の国民はアマイから・・・と思ってやっている鉄面皮が透けて見える。
マスクを引き千切られてアザ・アバタをゆび指さされてもなお、それはアザではないエクボである言い切ろうとしたのは、まだ記憶に新しい。
吹けば飛ぶような個々人の顔の美醜などどうでもよいけれど、一国の政治のただれ口を権力のマスクで蔽い隠されているのは、国民は甘く見られているようで口元を歪めたくなる。
まあ、わしらは甘く見られてもしようのない国民ではアリマスけどね。
こっちのほうが問題なんデス、ほんとうは・・・。
当ブログは週1回の更新(金曜)を原則にしております。いつなんどきすってんコロリンと転んで、あの世へ引っ越しすることになるかもわかりませんけど、ま、それまではね。