デイサービスって、何をサービスするとこ?(下)

UFO

 最近、「え、ほんと? こりゃ、うかうかしておれんな」と思うことが多い。

 そのひとつが、現代日本社会の大問題である少子高齢化問題だが、その大問題の子分格として高齢者の認知症がある。
 令和2年の厚労省の報告によると、「要介護認定者数は、65歳から74歳で全体の1割強だが、75歳以上になると9割弱と急増する、という。
 言いたくないが、わしが75歳を超えたのはもう10年以上も前である。センセンキョーキョーとならざるをえんではないか。

 その認知症の原因のひとつは、年を取ると会話が減ること、つまり他者とのコミュニケーションが縮小することだそうだ。
 ところが「デイサービス」に行くと、その会話をする機会はいくらでもあるという。当人にその気があれば・・・だけどサ。

 週2回、デイサービスに勤勉に通っているカミさんの受け売りだが、その実態がちょっと面白そうだったので(少なくともわしには)、その一端を紹介してみようと思って前回から書いている。(前回の記事はこちらから)
 
 デイサービスに通っている人というのは、要するに、日常生活に何らかの支障がある人たちだということだ。
 そういう人たちが、ひとつ所に集まって、自由にざっくばらんに話をするとなると、いったいどんな話をするのだろうと、野次馬根性がまだいくらか残っているわしにはちょっと興味が湧いてきて、カミさんに聞いてみたわけだ。
 
 ま、当然だけど、たいした話が交わされてるわけじゃない。
 実は昨日の夜ね、窓の外にとつぜんUFOが現われて、驚いていると宇宙人がトコトコ降りてきて、壁を通り抜けて部屋の中に入ってくると、こんなとんでもないコトを言い始めたの・・・なんて面白い話が出てくるわけはない。
 絶対ないわけではないかもしれんが、「この人、私よりだいぶ認知症が進んでるわ」と思われてオシマイだろう。
 
 実際、語られることはほぼすべて身のまわりの、どうでもよいコトガラの話だそうだ。
「身のまわりって、具体的にはたとえばどんな?」
 とさらに突っこんで訊いてみると、やはりどうでもよい身辺話で(当たり前だ)、ことさらここに書くほどのものではない。

 しかし内容はどうでもよくても、そこには、ある特べつな傾向が二つほどあることに気づく。
 ひとつは健康話もしくは病気話で、これは当然予想されることで面白くも何ともないが、もうひとつ、他に大きく差をつけてある傾向のあることが分かる。

 自慢話である。何らかの意味で自分もしくは自分に関わることを、得意げに言葉や態度にしてひとに示す。
 
 自分の父親の家は格式の高い血筋だとか、母親の実家は古い由緒ある家柄だとかいうのは、カビ臭いニオイのする伝統的自慢話だが、最近は家柄ではなくペットの自慢話・・・飼い犬や飼い猫の血筋(純血度や希少性)を自慢する者がけっこう多いそうだ。

 毛並み(血筋)の自慢だけでない、毛そのものも自慢する。
 毛のガラ(模様)が美しいとか珍しいとか、手触りが溶けそうなくらい柔らかいとか夢見心地の感触だとか。
 中には猫の足裏の肉球の匂いが堪らなくステキ、と自慢する者もいるらしい。
 
 若いころ外国に留学していたとか、長く住んでいたとかいうのも、昔からよくあるカビもの自慢話だけど、最近は、兄弟だか従兄弟だとかが “山奥にポツンとある一軒家” に住んでいるこを自慢する人もいるらしい。へー!
 
 自分の家の庭に、どっかから名もない花の種が飛んできて、世にも美しい花を咲かせた・・・ということを自慢する者もいる。自分の種を自慢できないから、飛んできた花の種を自慢するわけかい?
 
 ・・・ま、こういうのを並べてるとキリがないからやめるが、ちょっと変ったところでは、カミさんの通っているデイサービスの全員(利用者はもちろん職員までも)が、この頃なにかというと話題にする話があるという。
 
 聞けば誰でも知っている超有名人の孫が、最近、このデイサービスに入って来たのだそうだ。
「ねぇねぇ、○○って知ってるでしょ。あの人のお孫さんが、私の行っている(働いている)デイに入ってきたのよ」
 とダレカレとなく言いたがるらしい。
 そりゃ年をとって必要となれば、有名無名にかかわらず、デイサービスにだって来るワね。
 
 それにしても、人間っておかしな生きものだよねぇ。
 移動するのに車椅子が必要とか、食事するにも排泄するにも人さまの手助けが必要だとか、生きる上に必要な機能は年と共につぎつぎに失われていくのに、いつまでも衰えないで元気イッパイな機能もあって、それが自慢する機能であるところが、わしには何となく面白い。
 実質的に大した働きをするわけでもないのに、自慢が生きることのエネルギー源の一つになっているらしいところがネ。
 
 さて、当記事のタイトルに掲げた「デイサービスって、何をサービスするとこ?」という問いに公式に答える。

≪介護を必要とする人が、昼間の一定時間、専門の福祉施設で日常生活上の世話を受けたり、機能・適応などの訓練を受ける所≫(大手辞書)。

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