朝起きると・・・

毒虫

 ある朝、自室のベッドで目覚めると、自分が巨大な毒虫になっていることに気づいた。
 
 ゴメン、驚かして・・・。
 これは昔の文学がぶれの青臭い若者が、”世界的名作” の冒頭をまねてよく使った手だった。
 よぼよぼの老臭漂う爺さんが使ったんじゃ、鼻がひん曲がるネ。

 とはいえ、これほど強烈じゃないが、朝起きたとき自分が別人になったのではないかと思うことがある。じっさい甲殻類の虫になったかと思うぐらい、手足の関節が強ばって固くなる朝がある。
 
 そういう時はほとんど這うようにしてトイレに行き、ムリにでも顔を洗ったり歯を磨いたりしていると、しだいに関節の固さが柔らかくなってくる。1,2時間後にはふつうの体になっている
 
 こういう変化は、わしの場合そう度々は起きない。半年に一度くらいか。ただ、時折にしてどうしてもこういうことが起きるのか分からないのが無気味だ。
 しかしまあ、日によって体調がさまざまに違うのは、これも老人の属性の一つだろう。アキラメルしかないってコト。
 
 カミさんも80歳になり、老人の完全資格を取得したので、近頃は日によって朝起きたときの体調が違う。
 
 たびたび毒虫になるわけじゃ無論ないが、毎朝その日の体調が百面相みたいに違って現われる。
 体調が違えば気分も違う。
 気分が違えば、体全体が醸しだす雰囲気も変わる。
 人生には “照る日もあれば曇る日もある” と言うが、照ったり曇ったりしする程度には、カミさんの雰囲気はまいにち変わる。

 これがけっこう生活に与える影響が大きいんだよね。
 もともとちゃんとした心構えが生活の中心にどんとあって、その上で、周辺に浮き沈みする細事に適宜に対応する・・・というような余裕のある話じゃない。

 もっと単純でストレートで下世話な話。
 つまり毎朝カミさんが起きたときの顔に笑顔が見られるか見られないか、機嫌が良さそうか悪そうかで、その日一日の、家のなかの雰囲気がそれなりに変わってくるのでアル・・・というサエない話。

 お前さん、けっこうだらしないんだねぇ。カミさんの顔色しだいで生活を左右されるのかい? って言われそうだ。

 ま、まったくその通りデスけどね。わしもいつもそう思ってる。
 カミさんの機嫌が悪そうだったら、バカバカしい冗談の一つでもかまして、雰囲気を変えられないかと思う。

 しかし彼女の不機嫌は、その場の何かでヒネたりソネたりした結果ではない。体調の悪さだが原因だから、ジョークのひとつふたつで変えるわけにはなかなかいかない。
 で、結局、カミさんの体調の不機嫌さが、わが家の一日の雰囲気を左右する。

 ま、こういう、まともな人たちにとってはどうでもよいチリアクタのような些事に振り回される日々を、ヨロヨロ生きているのが老人だってことデス。

 ありていに言って、長生きしてもあんまりいいことはないねぇ。
 

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