あんたも絶対はまる落とし穴

慢心・傲慢

 一時は「女帝」だの「日本初の女性総理誕生か!」などと言われ、飛ぶ鳥おとす勢いだった小池百合子東京都知事が、あっという間に尾羽うち枯らし、いまや「緑の狸」とか「泥の中に落ちた黒百合」などと言われている。
 彼女の尻馬に乗ろうとした連中など、乗ったとたんに尻から振り落とされ、「小池にはまってさあ大変」と囃される。これじゃドングリというより下手なロデオのカウボーイだ。

 都知事選と都議会議員選挙で圧勝し、その後もずっと支持は続いていたのに、なぜ彼女は突然サポートを失ったのか。

 テレビや新聞・雑誌で、政治学者や評論家のおっちゃんやおばちゃんたちが、それについていろいろ・あれこれ言っていたが、結局最後は、わしもうなずけるある一つの言葉にいきつくようだった。

 若いころ、わしの働いていた職場に、ひとりの男が地方支社から転勤してきた。
 彼は地方で採用されて支社の契約社員となり、仕事で結果をだして正社員になって、そこで本格的に頭角を現して本社勤めとなったのだった。

 だが彼は見た目いかにも田舎ふうの垢抜けない男だった。身長が150㌢くらいの小男で、顔もどこかネズミに似ており、まさに貧相を絵にかいたような風体だった。

 しかし、彼はずば抜けて頭のいい男だった。万に1人か2人・・・と言いたいほど、物事のよく見えるキレ者だった。

 彼は自分が人にどう映るか、どんな印象をもって見られるかを十分に承知していた。
 のみならず彼のすごいところは、その自分の弱点を100パーセント利用して人をあやつり、支配して、出世の階段を上っていったことである。

 どんな仕事でも、人間関係はきわめて重要な基本要素であるが、彼はその人間関係づくりに人の真似のできない手を使った。

 具体的には、誰が相手であっても、まず自分を最下位におくのである。頭の良さなどチリほども見せない。むしろ女王にかしずく婢女(はしため)といっていいくらい。外観の見すぼらしさが、そういう彼の卑屈な態度(自己演出)を不自然に見せなかった。

 相手は無意識のうちに優越感をくすぐられ、警戒心を解き、スキを見せた。彼はそのスキ間から懐の内に入りこんで、相手の裏表を思うままさぐった。その結果、相手が操り人形のように自在に支配されていくのは、手練れの傀儡師(くぐつし)を見るようだった。

 こうして彼は、本社勤務になってわずか数年で、ふつうの人なら数倍はかかるであろう昇進を果たした。その地位の高さに、モノを見る目のずば抜けた確かさが加わって、彼は皆から一目も二目もおかれるようになり、楯つく者はもちろん、異論をはさむ者もいなくなった。

 しかしその時点から彼は穴を掘りはじめたのである。やがて自分が落ち込むことになる “慢心の穴” を。
 わしは彼をずっと見ていて、この穴は人間の誰もが免れえない陥穽だけれど、彼だけは陥らずに避けて通って行くだろうと思っていた。彼ならそれができるだろうと。地位や権力を手にするまでの彼は、まちがいなくそれを見極める目を持っていた。

 その彼でさえ、実際に地位・権力を手にしたとき、暖まった部屋の窓ガラスがくもるように、誰よりもよく見えた目がくもり、それが彼の脇を甘くした。
 
 結局、持って生まれた資質や才能もさることながら、それを活かすのも殺すのもそれが置かれた環境なのだろう。 
 そうした環境からの影響を受けずにいることは、人間にはほとんど不可能のように思える。

 ある環境とセットになっている「慢心・傲慢の穴」。
 この穴に落ちずに通り抜けられる人間って、いったいどんな人なんだろうと、夜空の銀河のなかに流れ星を探すような気分になる。

ポチッとしてもらえると、張り合いが出て、老骨にムチ打てるよ

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あんたも絶対はまる落とし穴” に対して 2 件のコメントがあります

  1. むらさき より:

    わかる~~~♪
    わたしゃ、頭が弱いからうまい言葉が浮かばないけど、ホントに解るわ~~~
    そういうことよね~
    それが、人間の悲しいところなのよね♪

    1. Hanboke-jiji より:

      人間って、うれしいことより悲しいことのほうが多いよな。
      「花の命は短くて苦しきことのみ多かりき」って、
      むかしの女流作家が言ったけど、
      昔も今も、苦しいことが多いんよね、人の世は。
      それでも生きてかなくちゃならねえところが、
      人間の哀しいところよ、って寅さんなら言うかな。

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