目を盗む
目を盗むことは心を盗むことだ。
何回か前の当ブログの記事「バーバー・バァバ」で次のようなことを書いた。
人間は年をとるとだんだん頭の髪の毛が少なくなる。個人差はあるにせよ、これはまあ自然な現象だから文句は言わない(…言えない)。
しかし文句のひとつも言いたくなるのがバーバー、つまり理髪店の料金体系だ。
理髪店の仕事の対象はお客の頭髪だ。それは先に述べたように年齢が増えるにつれて減る。つまり仕事に要する時間や労力はあきらかに減少するはずだ。にもかかわらず、それに対応した料金体系になっていないことに、すっきりしないものを感じる・・・とジョーク半分だけど書いた。(リンク「バーバー・バァバ」はこちら)
同じようにすっきりしないモノは食料品にもある。
たとえばうどん。スーパーなどで1食分ずつビニール袋に入れて売られている茹でうどんだ。
うどん大好き人間のわしはかつて、1回で2袋ほどビニール袋から胃袋に移すのがふつうだった。ところがある頃から、どうも量が足りないと感じるようになった。年をとると食がほそるのがふつうなのに逆だ。おかしい。
あるときふと袋の表示を調べてみたら、値段は同じなのに袋の中身が同じではなかった。いつのまにか量が減っていた。
当方の記憶では(会社によって多少のちがいはあるが、わしが買っていたものは)最初は1袋250gだった。それがいつしか240gになり220gになり200gになり、今は180gだ。3段跳びなら陸上競技にあるが、うどんに4段跳びがあるとは知らなかった。うどん業界にはソートーの脚力の持ち主がいるらしい。
同じようなことは瓶詰めの保存食や、パウチ入りの冷凍・レトルト食品などでもちょくちょく見られる。
値段は変わらなくても中身の分量が変わる。つまり減る。実質的な値上げだ。
値上げそのものをウンヌンしているわけではない。状況の変化など事情によっては値上げが必要な場合もあるだろう。
しかしここで言っているのは、値上げの仕方だ。まるでベテランの空き巣狙いみたいに、人の目を盗んでこっそりと値上げする。じっさい腕っこきの空き巣狙いは、ひとの家に忍び込んでモノを盗んでも、住人が盗まれたことに気づかないような仕事の仕方をするという。
買い手が気づかないように値上げをするというのは、それと同じだと思う。モノを盗んだわけではないが、消費者の目を盗んでいる。結果として心も盗む。
このように、それをとはっきり分からないように密かに何かやるというやり方は、食品・商品に限らない。ほかでもあちこちで行われている。
たとえば年金。わしらのような高齢者には年金は命の綱だが、その命の綱がいつのまにか細くなる。
政府はいろいろと理由をつけて、制度のあちこちをいじり、給付乗率(年金額の計算の際に使われる係数)を変えたりして、結果的に給付額を減らしている。
いちおうそれは公にされるが、一般国民にはその説明がよく理解できないので、目を塞がれているのと同じ。つまり目を盗まれている。
ほかにもある。
早い話、いま問題になっている “もり・かけ” がそうだ。自衛隊の日報隠ぺい問題もそれだ。国民に代わって国の行政や防衛を担っているはずの公務員や政治家たちが、国民には分からないようにコソコソ何かやっている。それらはたいてい国民には知られたくないことだ。だから分からないように密かにやる。
”もり・かけ・日報” はたまたまシッポが出てしまったが、ずる賢く処理してシッポを隠したままのものは、ほかにいっぱいあるだろう。出ているのは氷山の一角。
国民の代表が国民の目を盗み、心を盗む。
情けないがこれが日本の政治・行政の現実だ。
うどんの4段跳びなんぞ、アレコレ言ってる場合じゃないワ。
次の選挙のときには、盗まれないようにちゃんと目を見開いていなきゃあな。
国民がモノを言うにはコレしかないんだから。