死刑台に載る俳句

死刑台

 私は若い頃からのクセで、新聞を読んでいて何かで引っかかる記事があると切り抜く習慣がある。またはパソコンに取り込む。

 そんな記事のひとつに、読み返すたびに心臓を素手で掴まれるような切ない気持ちになるものがある。記事というよりコラムだが・・・。
 
 60年以上も前に、北山河という俳人がいて、彼は大阪拘置所で死刑囚に俳句の指導をしていた。
 一冊の本が遺されている。

 現在は死刑の執行は当日の朝に本人に知らされるが、当時は執行の2日前に告知されていた。
 その、死刑執行を告知された死刑囚数十人が、執行前日に開かれた「別れの句会」で詠んだ俳句が、この本に載せられている。本の題名は『処刑前夜』、編者は前述した北山河である。
 
「別れの句会」で詠まれた俳句のなかには、たとえばこんな句がある。
 
  春寒し思うこと涸れて動悸うつ
  絞首台のぼりてみればあたたかき           
  土壇場にまだ欲ぬけず春寒き
  人を殺せし掌に子雀は安心す

 人間は死を目の前にすると、もはや見栄を張ったり格好つけたりしない。素のままの丸裸の姿になる。これらの句には、その素のまま丸裸の人間が詠まれている

 どんな人であれ、虚飾を取り払った人間の姿は、ひとの心に触れる。

 私は最近、心がある状態になると、この、死刑囚が処刑直前に詠んだ俳句を取り上げたコラムを引っぱり出して読むことが多い。
 
 なぜだろう。
 現在の私の状況が、死を目前にした人間の状態に近くなったからだろうか。

 よくわからない・・・。
 

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