ドナルド・トランプの作り方

D・トランプ

 若い頃、映画の仕事をしたいと、熱く思っていた時期があった。

 ・・・なのに、いまや映画館に足を運ぶことさえない。田舎町で近辺に映画館がないこともあるが、大きなスクリーンに接することがない。
 せいぜい町の福祉文化会館で、どこかの文化団体などがやる自主上映映画を、年に2,3回観るていどだ。マラソンでオリンピック代表選手を目指した人間が、ときたま思い出したように家のまわりをジョギングするようなものだろう。
 
 そのかわりテレビで放映する映画は、できるだけ観るようにしている。
 ・・・のつもりだが、それさえだんだん回数が減っている。
 さびしい感をぬぐえない。
 
 そんなわしだが、最近、ぜひ観てみたいと思う映画があらわれた。
『アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方』。
 題名どおり、D・トランプ米大統領の若い頃を描いた・・・というか、あばいた映画だという。
 狂犬病にかかった赤犬のようなこの男のことは、以前から目を離せなかった。
 
 むかし小学校で、どこか歯車が外れたような男の子がいて、教室内を引っ掻き回す言動をすることがたまにあった。しかしそういう子はそのうち、どこかの養護施設か特殊学校に移されたものだ。
 
 ところがドナルド・トランプの場合は、そのまま大人になって、大不動産会社のトップとなり、世にはばかり出た。
 どころか、世界最強国の大統領にまで上りつめたのである。
 いったい、この男はどのような生まれ育ちをしたのだろうか、と関心を引かれずにはおかなかった。

 で、実際に観たわけではないのだが、この映画に関するさまざまな情報があちこちから入ってくる。
 本当かどうか判らないのだが、トランプは若いころ、「気弱で繊細な青年だった」そうだ。
 そんな若者が「いかにして世界を掻き回す怪物になったのか」。

 ・・・というと、彼は「ある人物に導かれて驚異の変貌を遂げた」のであるという。『アプレンティス』という映画は、それを描いた作品だという。客を呼び込むためのやや宣伝くさいニオイのする話だけれど・・・。
 
 そのある人物とは、悪名高い伝説の弁護士、ロイ・コーンという男だそうだ。
 この男コーンが、気弱で繊細だった20代のトランプを徹底的に教育し、「勝つための3つのルール」を授けたという。
 そのルールとは、
 
 1.攻撃、攻撃、攻撃
 2.非を絶対に認めるな
 3.あくまで勝利を主張し続けろ

 この話を聞いて驚かずにおれなかった。
 半世紀を経た現在のドナルド・トランプがやっていることそのものであるからだ。
 まるでこの「3つのルール」が、そのまま衣装を着てアメリカ大統領になっている。

 若いときの教育・訓練が、人間に大きな影響を与えるのは論をまたない。
 しかしわしは思うのだが、やはり同時に、ドナルド・トランプという人間の中にはある種の生まれながらの資質があり、さらに、その資質を生かすべく、今生にある種の役割を運命として与えられているのではないか、と。
 ロイ・コーンという男も、そのために用意された人間ではないかと。

 よく見るテレビ番組に、NHK・BSでやっている「ヒューマニエンス」という情報番組がある。
 現在の最先端科学が発見したり解明した新たな「人間についての智見」を、その問題に詳しい専門家を交えてトークする番組だ。

 それを観ていて毎回つくづく思うのは、人間の身体と心(精神)は、いかに繊細で複雑で精緻を尽くして創られているかということである。
 そこには「神」が関わらずにはありえない・・・と思わずにはおれない。

 一方、ガザやウクライナ等の国々・地域では、人類始まって以来の人と人の殺し合いという愚行を相も変わらずやっている。
 しかし、ここにも神の手が働いていると近ごろ思うようになった。

 どうも長く生きていると、運命論者にならざるをえないようだ。
 わしだけかも知らないけど・・・。

 

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ドナルド・トランプの作り方” に対して 2 件のコメントがあります

  1. みやこ より:

    えッツ!???
    ホント?
    週2回?
    ・・・楽しみが増えました。
    でも 無理なさらずに。 

    1. Hanboke-jiji より:

      すみません。「お知らせ」にある ”週2回” は ”週1回” の誤りでした。
      現在はもうだいぶ老いさらばえて ”週1回” で精いっぱいです。
      とにかく老いたくないですねぇ。

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