利き腕がダウンすると何が起きる?

 何年かまえのある朝のことだった。
 起きてみると右腕が痛い。何がどうなったのか、痛くて自由に動かせない。
 カフカの『変身』じゃないが、ある朝起きてみたら若いイケメンに変貌していて、やたら女にモテて困った・・・って話なら書いていても楽しいんだけどねぇ。

 それまでそんな腕の痛みは経験したことがなかった。
 ネットで調べてみると、どうも「繊維筋痛症」というヤツに症状が似ているる。「中年以降の女性に多い症状」とあるが、もちろんわしに女っ気はないし(中年以降ではあるが・・・)、訳が分からん。しかしもしこれが繊維筋痛症だとするかなり困る。こいつは原因不明の病気でかんたんには治らないらしいからだ。

 わしは右が利き腕だ。その右腕が自由に動かせないというのは、何とも不便だ。そんなことは当りまえの話で、わざわざブログ記事にすることもないのだけれど、ちょっとだけ書いてみたいと思うものがある。

 男性はピンとくるかもしれない。だがご婦人がたは経験できないはずだから(性転換まえのおネエさんは別)、ひょっとしたら「へー、そういうものなの・・・」と思っていただけるかもしれない。

 利き腕が不自由になってまず困るのは、やはり食事である。箸をうまく扱えない。食べものを口へもっていくのに苦労する。で、つい口を食べ物のほうへ近づけて食べようとすると、「犬食いはやめなさい!」と注意の矢が飛んでくる。だからといって、じゃ、しばらく食べるのをやめとくか・・・などと趣味のテニスを休むようなわけにはいかない。

 しかしまあ、世の中にはスプーンもあるし、最初はむずかしくても、少し訓練して左手を使う手もある。要するに辛抱づよく時間をかけて食べれば、なんとかなる。

 だが、生きものには食事のほかに、毎日しなければならないものがもう一つある。
 お察しのとおり、排泄デス。特に問題なのは排尿。
 排便のほうは回数が少ない(わしの場合は2~3日に1度だ)からそれほど大きな問題ではない。しかし、小用のほうは2~3日に1度というわけにはいかない。いや老人性頻尿のケがあるわしは、1日に何度も・・・時によると2ケタに達することもあるので、この問題が問題になる。

 この問題とはどの問題か。
 これももうお察しと思うが、そしてご婦人がたは眉をひそめておられるかもしれないが、男は生きるうえで避けて通るわけにはいかないのだ。 
 それは排尿のさい、どうしてもあるモノを出し入れしなければならないことである。夜も昼も寝巻一枚で生活する横着者もしくは豪の者はべつとして、ふつうはズボンの前のジッパーを上げ下げしなければ排尿はできない。

 この作業が、利き腕を痛めると難しくなる。少なくともわしの場合は大変だった。
 つまり、ジッパーのつまみをわずか10センチほど上げ下げすることが、経験者以外に分からないキツイ労働になる。現役時代の小錦を吊り上げるほうがまだましだ・・・と思いたくなるほど。しかもスルーするわけにはいかないのだ。

 この苦労が頭にあるので、尿意を感じてもできるだけ我慢する。人間は(少なくともわしは)嫌なことは先送りする。その結果トイレに入ったとき膀胱は、国技館の天井から「満員御礼」の幟が下がっている状態になっている。うっかりすると、呼び出しも行事もいないのに尿関が土俵に上がってきかねない。それは困る。

 そこで猛烈な腕の痛みをがまんし、えいやッ、と気合を入れてジッパーを下ろす。噴出ぎりぎりだった膀胱は荷をおろしてほっとする・・・といったバカバカしいことを最初のうちはやっていた。

 が、あるときふと気づいた。左手を使えば・・・って。
 早速やってみた。左手にとっては慣れない作業なので、多少ギクシャクはするが、激痛をがまんして利き腕でやるより遥かに楽だった。わしは小錦を吊り上げて土俵の外に転がしたような気分になり、ホッとした。
 もっとも、そんなことも思いつかなかったなんてバカみたい・・・と言われればそれまでだけど。

 俗に、馬鹿は死ななきゃ治らない、という。
 早く言やあ、わたしのことデス。
 小錦を放り投げたつもりの錯覚で、おろかしくも油断したのである。

 そのときもセッパ詰まってからトイレに飛びこんだ。
 まだ一人前になっていない左手にあわてて作業させたからだろう、途中でジッパーがズボンの布を噛んでしまった。マズイ! と元へもどそうとしたが、戻らない。あわてて力を入れたものだから、かえって強く布に食いこんだ。にっちもさっちもいかなくなった。

 一方わが生理現象のほうは、やはり満員御礼の幟がはためいている。限界状態。膀胱部屋出身のわが尿乃海は、準備もまだととのわない土俵に今にも飛び出そうとしている。ああ、どうしよう、どうしよう。

 ・・・と焦っているうちに、ついに尿乃海は土俵へあがる踏み俵に足をかけた。ああ、もう駄目だ、間に合わない、絶体絶命!

 ・・・と思った瞬間だった。ほとんど無意識のうちにズボンとその下のパンツをいっしょに、左手が強引に引き下ろした。間一髪、堤防決壊の難をまぬがれた。

 それができたのは、ジッパーがほぼ半ば辺りまですでに下りていたからだ。布を噛んだのがもう少し上のほうだったら、この緊急避難も不可能だったかもしれな。パンツの中の大洪水は避けられなかった。

 ほっと一息ついたら、とつぜん恐ろしい想像がうかんだ。
 ジッパーが噛んだのがズボンの生地ではなく、わが御本尊サマの皮ふだったら・・・という想像。
 ぞッとして、体がかッと熱くなり、どッと汗が出た。
 
 ここで終わると、お前さんいったい何が言いたいの? って思われるだろうし、何となくあと味がよくないので、余談をひとつ付け加える。
 何かで読んだのを思い出したのだが、利き腕がきかなくなっていろいろ生じる不便のなかで、特に男にはうれしくない不都合がある。・・・と誰かが言っていた。
 男限定の不都合って、そんなものある?
 あるのデス。布団の中で愛する女性と仲良くするとき。

 ・・・というのであるが、考えてみれば、わしにはもう関係のない話だったナ。

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