隣の家の窓

 わが家は外出するとき、玄関から2,30メートルほど狭い路地を歩く。
 歩きたくなくても歩かなければ公道に出られない。
 
 その路地のすぐわきに隣家の家屋が迫っている。
 おそらくリビングのものと思われるガラス戸が、路地を歩く者の目から、ほぼ1.5メートルほどのところにある。下部が床(ゆか)まである全面1枚ガラスのサッシ戸だ。

 路地を通る人は、その気になれば、隣家の居間がまる見えになる。そういう配置であり距離だ。路地との間に金網の垣根はあるが、境界は主張できても視線を遮るものとしてはまるで無能。
 
 同じような造りの家が3軒並んでいるから、おそらく建売りだと思うが、この家の住人は、移ってきてから「しまった」と思ったにちがいない。

 おそらく内見のとき、すぐ目の前に隣人の通る路地があることに気づかなかったのだろう。路地は家の地面から1.5メートルほど低いところにあるので、人が通らないかぎり家からは見えない。

 重要事項説明書には書かれているが、不動産屋は内見時にそのことをあえて口にしなかった。あとで説明書をよく読んでおいてください、などと言って逃げた。だが客は説明書のその部分を見落とした。
 ・・・のではないかと推測する。細かいことをうるさく言うくせに、肝腎なところで抜けている人間は、わしを含めてけっこう多いからかね。
 
 で、その隣家の窓にはいつもカーテンが引いてある。白い薄手のものと厚手の生地のものの2枚掛けだ。

 昼のあいだは薄手のカーテンだけでも中は見えないが、外が暗くなって部屋に灯りがともると見える。で、夜になると厚手のものも引かれる。

 ま、面倒だよね。で、うっかり、どっちのカーテンも引き忘れられていることがあるの。
 
 そんなときでも、もちろん隣家の居室をのぞきこむようなハシタナイことはしない。
 が、本心をいえば、ハシタナサが全くないわけではない。
 どんな家具調度が並んでいて、どんな人間が、どんな風に暮らしているのだろう・・・といういわゆる覗き見趣味。
 
 そんな低俗な趣味はチリほどもアリマセーン、と胸を張って言えるほど高潔でも上等人間でもないわしは、意識して見ないように努力しながらこの路地を通る。
 
 だが、人間が意識して何かやると不自然になる。どんなにうまくやった積もりでも、どこかに滲み出る。 “意識しないように意識している” ってことがね。
 
 ま、面倒くさいね、人間ってのは。
 ・・・って、面倒くさいのはお前だ。そんなことをイチイチ気にするバカはあんまりいないよ。要するにヒマなんだ、お前サンは。・・・と言われそうだ。
 
 そう、ヒマなの。
 なぜか神サンが呼んでくれないからね。
 

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