シロクマ先生診療記(1)

入れ歯

 年寄りにとっては「歯が命」である。
 イノチだなんて、相変わらずお前サン大げさだな、と思われたかもしれない。
 ちがう。あんたも年をとって歯抜けになったら分かる。
 すでに歯抜けなら、先刻ご承知だろう。
 
 歯は、すぐ命にかかわるわけじゃないが、命の素である食べものを摂るのに不可欠だ。じわじわと首を絞めてくる。侮れない重要パーツだ。
 
 残念ながら、わしも加齢とともに、この重要パーツの多くを失った。
 これまで上下とも部分入れ歯にしていたのだが、先日、金属のバネで上の入れ歯を支えていた最後の自歯が、ついにコケた。
 支えの杭がなくなったので、入れ歯を歯ぐきに保持できなくなった。多動性障害児(ADHD)のように口の中を勝手に動きまわる。食べものを噛めない、どころか話もまともにできない。

 ええい、メンドー、と取っぱらってみた。
 入れ歯は消えたが面倒は消えずに残った。
 何より、上だけとはいえ、歯が1本もない丸裸の歯ぐきでモノを噛むというのは初めての経験だったが、これがまた想像以上に不快だった。
 いうなら全身丸裸にされて表通りに放り出された感じ。
 なにやら身に覚えのない違和感が口の中にあふれ、その違和感のなかに、ストレンジャー感や悲哀感みたいなものが蠢いている。
 
 が、なんといっても問題は食べものが噛めないことだ。歯が上半分ないのだからトーゼンだが、もう少し何とかなるのではと思っていた。
 歯なしの歯ぐきで圧しつぶせるのは豆腐ぐらい。カミさんがとろとろ煮込んで作ってくれたゆるい粥も、米粒はつぶせない。

 これも初めて知ったが、口のなかで噛み砕けなかったものは、呑みこもうとしてもなかなか呑みこめない。喉の関所がガンコに門をあけないのだ。
 なぜそんなにガンバッテいるのか知りたいが、分からない。

 こうして、すぐには死にやしないが、生きるうえで歯がどれほど重要かということをガツンと・・・じゃなくフニャフニャと思い知らされた。

 で、仕方ない、近所の歯科医へ駆け込んだ。
 ・・・のだが、この世の常で、ここでもまた思うようにいかないことがいろいろあった。(それを次回から述べる)
 

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当ブログは週2回の更新(月曜と金曜)を原則にしております。いつなんどきすってんコロリンと転んで、あの世へ引っ越しすることになるかもわかりませんけど、ま、それまではね。

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