どうでもよい提案

 ススラー

 先日テレビで、「ススラー」という言葉がこの世にあることを知った。

 最初耳にしたとき、「煤(スス)」を払う人? ・・・かと思った。師走の大掃除のときなどに、天井や壁のススを払う人。正月休みで家にいて、借り出された亭主・・・とかね。
 ここまで読んだだけで、これを書いてるのは古い人間だと分かるネ。
 
 だがその古い人間も知った。
 いま「ススラー」と言えば、スス払いなどではなく、食事中に音を立てて食べる人のことだ、と。
 なるほど、言い得て妙だ、と古い人間の腑にも落ちた。
 
 この言葉を作り出したのは、おそらく若い女性だろう。
 なぜなら食事のとき音を立てるのを嫌うのは、日本では女性が多いからだ。それも若い女性。
 
 テレビでも、中学生か高校生くらいの女の子が嘆いていた。
 父親と兄が食事のときズルズル、ズズズーと音を立てる。注意しても直らない。あるいは直さない。死ぬほどイヤだ、家出したい・・・と

 ・・・斯くの如しで、「ススラー」を指弾するのは多く女性であって、指弾されるのはその父親であり、夫であり、兄弟である。つまり背中のホコリを払われているのは男である、というケースが多い。
 
 改めてネットのドアをすこし開けて世間を覗いてみて、驚いたネ。
「ススラー」に対する嫌悪感・憎悪感が想像以上に大きいことに・・・。
 彼女らにとって「ススラー」とは、マナーも礼儀もわきまえない無教養人、やや強めにいえば野蛮人、もっと強く言えばほとんど「ゾンビ」的存在であるらしい。
 
 ここまで嫌われるのは、もちろん食事中にたてる音の多くは、美しくも心地よくもない無粋な音だからであろう。
 だが昨今、来訪者も滞在者も多くなった欧米人の影響もあるのではないか。
 彼らにとっては、食べものを音をたててススるのは、食事中に派手なゲップや屁を出すのと同じらしい。

 話はトツゼン変わるが、昨今の日本語には「ススラー」のように、ある言葉のあとに「ラー」を付けた「〇〇ラー」という言葉をよく聞くようになった。
 ○○の真似をするひと、○○風の格好を追う人のことを言うようだ。
 1990年代の「アムラー」「シャネラー」あたりから始まって、今では「○○をする人」までを含める言葉になっているらしい。

 本記事のテーマに取り上げた「ススラー」もその系譜上の言い回しだが、この言葉づかいは応用しやすいので、用例はどんどん広がっているようだ。
 たとえば、「ススラー」の弟分で食事中くちゃくちゃ音を立てる人のことを「クチャラー」、マヨネーズが好きで何にでもマヨネーズをかけて食べる人を「マヨラー」、自分たちのことを「うちら」と呼ぶ女子高生を「ウチラー」、ヘタなダジャレを連発するおじさんを「ダジャラー」、何かというとすぐ野村克也監督のことばを引用する中年男を「ノムラー」・・・といったぐあい。
 
 たしかに便利だ。
 わしら老人に即していえば、年をとって肛門の括約筋が弱り、放屁回数がふえた老人は「オナラー」、尿道口の括約筋が弱ってちょくちょく失禁する人は「モレラー」、口を開ければ愚痴をこぼす人を「グチラー」、わしのように加齢によって脳内が薄くなった老人たちは「ボケラー」・・・と言えば、グダグダ説明しなくても一語ですむ。
 
 最後にそのボケラーからの提案を一つ。
 食事中に無粋な音をたてる人のことを「ススラー」というと書いたが、これは「ススラー」より「ズズラー」にしたほうがいいのではないか。
 濁音にすることで汚らしく聞こえて、食事マナー違反者への警告としてはより効くように思うのだが・・・。
 
 ついでにわしのように、しょっちゅうどうでもいいことを書いている人間は、「どうでもヨカラー」。
 

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