脳梗塞の急襲!(その2)

脳梗塞の急襲

 色目も流し目も使わないのに、闖入者が勝手に押し込んできて、思いもしなかった稲妻を走らせ、わが小さな人生に波乱と混乱をもたらした。前回、その経緯(脳梗塞発症時の様子)を書いた。(前回はこちら

 余談だがその前回の雑文、病院のベッドの上で書いたので、また、これまでスマホで文章を書いたことなどなかつたので、書く作業が実にもどかしかった。まるで床の上に散らばった米粒を、箸の先で一粒々々拾うようだった。もともと短気な傾向のあるわしは、じれったくて閉口した。

 しかしようやく退院できた。今はいつものパソコンの前でこれを書いている。刑務所から解放されて、シャバのめしを食っている感じがしている。

 それにしてもスマホで文を書くと、どうも漢字が多くなるようだ。想像するに、一字一字苦労して拾い上げて文にするので、かなの多いと 「サラサラした軽い文章」 に見えるのが気に食わないらしい。なんともアホらしい見栄だけど・・・。

 さて今回は、わしに闖入してきたのがどんなヤツだったのか、まずはそこら辺りから紹介しようと思う。

 正直いってこれほどヤなやつはいない。

 なんでまた、よりにもよってこんなやつが自分に取り憑かついたのかと、天を恨みたくなる。
 ま、誰だって、またどんな病気だって、自分の病気のことはそんなふに思うのだろうけど・・・。
 じっさい病院のベッドには、わしより遥かに大変で苦しそうな病人がゴロゴロいた。病気に苦しめられている人間は、世の中にはじつに多いのだと改めて思い知らされた。

 さて、この脳梗塞の特徴をいえば、まず口に麻痺がくることだ。俗にロレツが回らなくなるというやつ。

 この病気は右半身か左半身かどちらかに麻痺が出ることが多いのだが、しゃべる役割をになう口は顔の中央に位置しているので、どちらがやられても半分は影響を受ける。だから脳梗塞にはたいてい言語障害が伴う。・・・のじゃないかと、マヒしてヒマになった頭でベッドの上で考えたが、正しいかどうかは知らない。

 理屈はどうあれ、思うように言いたいことが言えないというのはじつに辛い。これほどイライラすることはない。訴えたいことが色々あるのに、猿ぐつわをかまされているようなものだから。
 人間の自己表現本能に関わるものだけによけいだ。一所懸命話しているつもりなのに、口からはミミズが泣き言いっているような、訳の分からない言葉しかでてこないのだ。ミミズじゃないミジメだよ。

 で、最初は、何ものへとも知れぬ怒りで顔が熱くなるようだった。そうなると緊張するのでよけい言葉が出なくなる。泣きたくなる。

 だがほどなくして、いくら足掻いてもどうなるものでもないことを思い知らされる。そのときの絶望感。暗く冷たい深い井戸の中へ落ちていくような感じ。

 それに拍車をかけるのは半身の肉体麻痺だ。
 わしの場合は完全に麻痺したわけではなく、三分の一くらいの運動能力が失われた程度だった。
 それでも歩くのに壁を伝わなければならなかった(それもゆっくり・・・国会の牛歩戦術とどっこいどっこいくらいネ)。

 また手に湯飲みを持つと何となく心もとない。今にも手からずり落ちそうな気がして落ち着かない。持ったことないけど、とつぜん大金を手にしたらこんな気持ちになるのかも・・・。

 麻痺しているのが利き腕だからよけいだが、特に指先の動きが鈍いのがもどかしい。ほんらい行くべき所へ的確に行かない。
 今も打っているパソコンのキーだって、つい隣のキーに触れてしまう。女にだらしのない爺さんみたいで気分よくない。

 また字を書くと、(今度は)ミミズが這ったような字になる。
 箸を使うと、仲のわるい兄弟のように箸先がまとまらない。
 さらに、新聞や本のページがなかなかめくれない。で、指にツバをつけようとすると、指先が口元へいかないでややアサッテの方へ行く。鼻の穴まで遠征したことはまだないけどネ。

 口も右半分の運動機能が不完全だ。
 口を開けると右半分がちゃんと開かない。半分だけへしゃげてる感じ。明らかに神経が顔の右半分にはちゃんと届いていない。言葉がうまくしゃべれないのはそのせいらしい。

 発声にかかわる神経や筋肉は、ものを飲み込む運動にもかかわるので、水や食べものを飲み込むのにちょくちょく失敗する。つまりむせやすい(嚥下障害)。

 とはいっても、食べ物がしじゅう口の端から垂れてくるほどではなかった。その点は助かった。あれはどこから見てもみっともないからねぇ。知性のかけらもなくなる。最初からない奴は問題外としても。

 右目もわずかだが垂れている感じ。もともとわしは多少垂れ目だから、あまり目立たないので助かる。

 また、うがいもうまくできない。ブクブクがフュクフュクみたいになる。どっかで空気がぬけてる。マも抜けてるかもしれない。

 外から見える障害は、まあざっと言ってこれぐらいだろう。
 が、問題は外側ではなく、内に与えられるダメージだ。これは目に見えないから、書くのがやっかいである。

 前回の冒頭にも書いたとおり、これまで病気らしい病気をしたことがなかったし、入院もこの年をして人生初体験だった。だからいきなり脳梗塞で倒れたショックは大きかった。異性との初体験時のショックなどものの数ではない。

 えッ、オレに何が起きたの? 嘘じゃないの? 悪い夢じゃないの?

 最初は定番どおりにそんなことを思ったが、嘘でも夢でもないことはすぐ分かった。

 分からせてくれたのは、前回にもちょっと触れたように、自分の意思で排尿をコントロールできなくなったからだ。

 わが身の上に落ちてきた初イベントのしょっ端が、ションベンまみれになった下半身から始まったとは、情けないね、ホント。(つづく)

 

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