お大尽

のみ忘れの薬

 今回のタイトルの「お大尽」というのは、いまや死語に近いから、若い人には「何じゃ、ソレ?」と首を傾げられるのが落ちかもしれない。

 「大尽」というのは「財産を多く持っている人」、つまりモノ持ち、金持ち・金満家のことである。その語に、尊敬もしくは丁寧を表す接頭語「お」を付けたのが「お大尽」。

 わしも若いころは人並みに、「いちどは “お大尽風” を吹かせてみたみたいものだ」などと思わないこともなかったが、すぐに「お前にはムリ、ホラを吹くのが関の山だ」と気づいて、すぐ引っ込めた覚えがある。

 ところがこの年になって思いがけなく、すぐ近くに「お大尽」がいることを知った。
 
 わしの傍にいる人間といえば、もちろん古女房以外にない。ビル・ゲイツや三木谷浩史みたいな、ITビジネスで大金をかせいだ息子がいるわけはない。
 
 その古女房が専用に使っている戸棚があるが、その戸棚の引き出しを、先日あるものを探していて開けてみてビックリした。
 中に同じような白い袋が、山のようにびっしり入っていたからだ。その袋の中には何かが入っていて、まるで妊婦の腹のように膨らんでいる。引き出しの中は、いわば何十人という妊婦がギューギュー詰めにされている状態だ。
 
 何しろ量が多いので、一瞬それこそ「何だ、コリャ!?」と驚いたが、よく見るまでもなかった。たいていの老人の家にはその辺に転がっている、薬の袋だった。医者に処方してもらい、薬屋で調合してもらってくるあのクスリの袋・・・。
 
 べつにクスリの袋に驚くことはないが、それがこんなに大量に・・・山と積まれていることに驚いたのである。

 しかし、それほど考えることなく理由は分かった。
 
 カミさんが何やかやの病気で日常的に医者に通うようになってから、もはや10年以上になる。
 行くたびに何かの薬をもらってくる。もちろん多くはちゃんと服んでいる。血液をサラサラにする薬など、服み忘れると命に関わるものもあるからねぇ。
 
 ところが服まないものもある。毎日服まないでも別に大事に影響しないクスリがあるからだ。

 たとえば、近ごろ片頭痛がちょくちょくするとか、最近肌が妙にかさついてきたとか、足の爪が変な形に曲がってきて痛みも少しある・・・とかで、重要な病気で医者にかかったときについでにそれらも訴える。医者も訴えられればまったく無視するわけにもいかないので、じゃお薬でも出しておきましょう・・・となる。
 
 ところが片頭痛などいまに始まったことじゃないし、肌のかさつきは病気じゃなく加齢のせいだ。足の爪など少々ヒン曲がっていても、ナニかで人目にさらすような場面などない年齢だから、本人に本気で治そうという気などない。つまり最初の2,3日が過ぎれば服まなくなる。それらが溜まる。なぜなら捨てないからだ。
 
 その辺がわしなどの感覚とは違う。
 何年もむかしに処方・調合された薬など、後生大事に取っておいてどうするのだ、と思う。カビが生えたりウジが湧いたりはしないが、今の体調には合わなくなっている可能性は高い。いや場合によっては体を害することだってあるだろう。
 
 いや当人はそんな考えなどもなく、単にその時々に捨てられなかっただけなのだろう。そのうち服むかもしれないので、とりあえず取っておこう・・・ぐらいに考えて、くだんの引き出しに放り込んでおく。

 チリも積もれば山となる、クスリも積もれば山となる。
 何十年も積もらせればソートーな山ができることの証拠が、くだんの引き出しの中のギューギュー詰め妊婦だというわけだ。
 
 冒頭に書いたように、「お大尽」というのは「モノ持ちの人」のことを言う。いうならカミさんは “クスリお大尽” だ。
 
 ”冴えないお大尽” だけどサ。
 

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