迷った末に訊いてみたら・・・
先日、若い女性(・・・といっても40代だが)も半数ほど混じるある集まりで、こんなことがあった。
正直いうとあまり話したくない出来事だが、いまさらカッコつけてもしょうがないし、自分に起きたことを書くとたいていこういう話になるのだから、ま、腹(首じゃないよ)をくくって話すことにする。でないと書くものがすぐなくなっちゃうからねぇ。
で、その集まりでのこと。
何の話のつながりだったか、ひとりの若い(さっきも書いたように40代半ばの)女性が、勢いこんでこんな話をはじめた。
「このあいだ、たまたま駅裏の甘味処に入ったの。初めての店で、入ったのはまったくの偶然だったんだけど、スゴイ発見をしたっちゃった」
「・・・・」
「入ったら店員さんが壁を指さして、『こんどこんなのを始めたんですけど、良かったら試してみませんか。評判いいんですよ』といかにも自信ありげに薦めたの。壁には、”渋皮栗とほうじ茶のブリュレパフェを始めました” と書いてあった。ちょっと惹かれるものを感じたし、店員さんの素振りがいかにも自信たっぷりだったので、少し高かったけど食べてみることにしたの」
「美味しかったのね?」女性のひとりがすぐに反応した。
「お店に入ったのは私ひとりだったんだけど、食べたとき思わず声に出して言っちゃった、『うわッ、美味しい!!』って」
「どんな風に?」別の若めの女性が興味ありそうに反応した。
「今まで食べた栗でいちばん美味しかった。渋皮栗とほうじ茶がうまくマッチングしていて・・・。もともとわたし栗は嫌いじゃない、というより積極的に好きな方なんだけど、こんな栗は初めてだった。工夫ひとつでこんな味も出せるのねって・・・」
さっき「どんな風に?」と訊いた中年女性が言った。「渋皮栗とほうじ茶を合わせたところが、確かにちょっとおもしろいわね」
それからしばらく、主に女性陣が栗の話で盛り上がったが、その間わしは別のことを考えていた。「ブリュレパフェってどんなモノなのだろう?」って。
「パフェ」はさすがにわしでも知っているが、「ブリュレ」が分からない。つまり「ブリュレパフェ」も分からない。そんなに美味しいものなら、少々高くても、甘党のわしは、こんどの誕生日にでも食べに行くくらいのことは許されてもいいのじゃないか、と思ったのだ。
そこで「ブリュレパフェ」ってどんなものか訊いてみた。いや訊く前にちょっと躊躇した。爺さんて何にも知らないんだ、と思われるのもシャクだと思って・・・。
しかしまあ冒頭に書いたように、この年でカッコつけてもしょうがないし、「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」ともいうし・・・。第一「知ったかぶりをするのは最大のアホのすることだ」というのが、そもそもお前サンの持論ではないのか。
・・・というか、若い人なら誰でも知っていることを爺さんが無邪気に尋ねるのは、むしろカワイイと思われるんじゃないの?
・・・ってお前さん、カワイイと思われたいのか? それこそブルるんじゃないの?
・・・などと、まあ、内心どうでもよい葛藤をやってから、思い切って訊いてみた。
「あのォ、ブリュレパフェって何ですか?」
みんながにこっちを見て、一瞬、場の空気の流れが止ったように思えた。
が、誰かがさりげなく、パフェの上部をバーナーか何かで焦がしたモノだ、というような説明をして、すぐ元の話題にもどった。
が、わしはちょっと後悔した。わずかだったとはいえ、自分のした質問が話に水を差すことになったからだ。
場の空気をもっと繊細に読むべきだと思った。
若いひとの話が盛り上がっている最中に、年取った爺さんが場違いな質問などして、座を気まずくする光景なんてオモシロクもオカシクももない。
ましてや、誰もが知っている質問を爺さんがするのはカワイイと思われるんじゃないのか、なんて、ほんの少しでも思ったのは老人のお気楽な認識不足も甚だしい。いまさら気づいても遅いが・・・と。
実はわしは、こういうドジをやらかしたときに塗る常備薬を、常に携帯して用意している。
「命長ければ恥多し」
同じ経験をしたであろう先達の言葉である。昔からある。
とはいうものの、この日の集まりで口にしたパフェは、あんまり後味の良いものではなかった。
ま、老人の日々はだいたいこんなもんだけどね。
ゴクローさん。
当ブログは週1回の更新(金曜)を原則にしております。いつなんどきすってんコロリンと転んで、あの世へ引っ越しすることになるかもわかりませんけど、ま、それまではね。