女は2歳半ですでに “女” である
このあいだ、知り合いの婦人が言っていた。
「女の子ってすごいわね。うちの孫、まだ2歳半だけど、もう男に媚を売るのよ」
生まれて2年半しか経たない幼女。自分の名前もまだ書けない、年を聞かれても指を出して答える彼女が、お気に入りの男性には “コビを売っている” としか思えない目つきやしぐさをする。…らしい。
同じお気に入りでも、女性に対してとる態度とは明らかに違うという。
「たしかに”すごい”と言えるけど、”おそろしい”とも言えるな」
などとわしは気軽に相づちを打ったのだが、考えてみるとたしかにすごい。ただしこれは “生きものの本能のすごさ” だろう。
すべての生きものは、自分の個や種が生き延びるためにさまざまな工夫や努力をしている。そしてその工夫が本能として定着しているのだろう。
特にわしがいつも感嘆するのは、天敵に対抗できない弱小動物や、自らは移動できない植物があみ出している工夫だ。
ある種の昆虫などが、敵の目を逃れるために作り上げている擬態の精緻さ。
食虫植物が匂いや外観でおびき寄せる、獲物捕獲作戦の巧緻さ。
蜜や実をあたえる代わりに花粉やタネを遠くへ運ばせる、巧みな繁殖戦術・・・等々。
テレビなどでそういう姿を見たり解説を聞いたりすると、いったい誰がこのような天才的なデザインや仕組みを考え出したのだろうと、わしはいつも気になってしかたがない。
そういうことを考えはじめると、銀河やブラックホールの中にさまよい込んだような気分になる。
生きものの本能とは、それほど深淵なものなのである。
人間もそうした生きものの一種。個と種の保存は根幹的な本能だ。
そして女がより良い子孫を残すには、より良い良い男(タネ)を必要とする。先ほどの幼女の話もそこにつながるのではないか。
では男はどうか。
より良い子孫を残そうとする気概を、2歳半にしてすでに持っているか。
・・・と問われれば、男のひとりとして首をタテに振るのは難しい気がする。男はどうも頼りない。
テレビで動物モノのドキュメンタリーを観ても、身を挺して子を守るのは多くはメスのほうだ。
人間のオスも、”種の保存” に対しては女ほどシビアではないのだろうか。
そんなことはないと思う。たんに戦略が女と違うだけだ。…と思いたい。
では、男の戦略とはどういうものか?
そう、ご推察どおり、「ヘタな鉄砲も・・・・」なのだ。
そして、それしかないところが、なんとも情けない。