“どこの馬の骨” 告知作戦

どこの馬の骨

「どこの馬の骨か分からんような奴に娘はやれん!」
 ・・・というような言い方があるのは、もちろんそれ以前から知っていたよ。
 でもな、その “馬の骨” に自分がなるとは考えたことがなかったので、一瞬、ウン? 誰の話? と思ったら、何のこたァない、わしのことだった。

 1週間まえの6月18日に書いた記事(→「結婚式のゴキブリ集団」)で、甥っ子の結婚式の話を書いたら、すっかり忘れていた自分たちの結婚式前後のことが、ノコノコ古びた顔を出してきた。
 で、それを書いてみるか・・・とサビついた記憶の扉をギシギシいわせながら開けてみたら、真っ先に飛び出してきたのが、先に述べた “馬の骨” 発言だったわけである。

 わしのことを「馬の骨」と言ったのは、もちろん女房の父親である、50年前の・・・。
 女房がおそるおそる話をもちだしたら、最後まで聞かないで、
「どこの馬の骨か分からんような奴との結婚なんて、絶対に認めん!」
 と一言のもとにはねつけたらしい。

 わしに直接言われたわけじゃないけど、反射的に、「オレ、馬じゃない、人間だ」とムッとしたのを憶えとる。だがすぐ、いかにも子供じみた反応であることに気づいて苦笑したが、やっぱりあんまりいい気分はしなかったのも憶えてるよ。

 でもこれ、よく聞く話だよね。娘をもった父親なら、結婚話が出たら最初に思うのはたいていこれだと聞いたことがある。わしはそのとき20代の終わりで、そういうことが一応分かる年齢になっていたので、要はこれから “どこの馬の骨” か分からせればいいだけの話だ、と思ってそれを実行に移したのである。

 たまたまそのとき、女房の父親は網膜剥離の手術で阪大病院に入院していた。かつて関西に在勤していたときに懇意になった医者がいるということだった。

 おお、ツイてるわィ、こりゃ最初から神サンはこっちの味方だぞ、とそのときわしは思ったね。

 前々から父親はソートーな頑固者だと聞いていた。これで荒馬か種馬みたいに元気なときだったら、「絶対に認めん!」と大見得を切ったてまえ、簡単には会ってくれないにちがいない。
 だが見舞いに来たという名目で、わざわざ東京から大阪まで足を運んだとなれば、そうむげに追い返すようなことはせんだろう。長期の入院で退屈して、頑固の虫も多少は足腰を弱らせているかもしれん。
 ・・・と、そう思ったのだが、この読みは甘かった。やっぱり会ってくれなかたのである。

 その頃はまだ丸一日休めるのは日曜だけだった。で、日曜日の朝一番の新幹線に乗った。
 休日だからなのか、阪大病院はがらんとしていた。人けのないやたら長い廊下で延々と待たされたあと、割烹着をつけた母親が現われて、父親は会わないと言っていると告げたのだった。
 で、梅田駅近くのうどん屋ででキツネうどんを食べて、また新幹線に乗って帰ってきたのである。

 だがわしは、無駄足だったとは思わなかった。たとえ会ってくれなくても、東京から大阪までわざわざ出かけて行ったという事実は、娘が連れてきた馬の骨がどんな骨か、その肌ざわりを父親に知らせる結果になっていると思ったからだ。

 事実その通りになった。
 退院して東京へ戻ってきた父親は、しばらくして会うと言ってきた。
 もっともその前に、一徹者の父親を攻略する戦術をほかにも2,3手をうっておいた。
 わしは両親がともに教育者の家庭に育ったこと、わしらにはすでに肉体関係があること、というかすでに半同棲状態であること・・・などを母親をつうじて知らせておいたのである。こういうことは明治生まれの人間には効くだろうと思ったからだ。今ならさしずめ “できちゃった婚狙い” みたいなものだろうか。

 こうした戦術が効いたのかどうか、初対面の父親は、予想に反して頑固一徹者という感じではなかった。そうじて鷹揚な応対だった。学生時代から短歌を詠むことが趣味だと聞いていたので、語彙が豊富だろうからと覚悟していた厳しい非難を、少なくとも頭ごなしに浴びせられることはなかった。

 そのあと、結婚式を挙げるかどうかでモメた(わしらは結婚式・披露宴はしたくなかった)が、お互い歩み寄って、当人だけで式は挙げるが人は招ばない、披露宴はしない、結婚写真だけを友人知人に送る・・・ということで妥協したこと等は、金曜にアップする次回記事「式は仏滅、泊まった宿は賭場だった」に詳しく書く予定。

 というわけでまあ、”どこの馬の骨告知作戦”は、いちおう成功したと言っていいわけである。

 しかし実をいうと、結婚に関するわしらのより大きな問題は、結婚後にぬるりと顔を出してきたというべきかもしれない。
 結婚するために「どこの馬の骨作戦」などと骨を折ったのは、いったい何のためだったのか!
 ・・・という思いを胸元に突きつけられるような事実が、結婚したあとで判明したのだ。
 ひと言でいえば、親父より娘のほうがよっぽど曲者だったのである。
(それについては、2017.08.31の記事「結婚タクシー説(縁は魔モノ? 貰いモノ?)」に書いているので、気が向いたら読んでみてちょーだい。)

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