爆発した玉(2)

医者に怒った

(前回からの続き。前回を読んでないと、これから書くことが何のこっちゃ分からんよ。まず前回を先に読んでね。→ こちらから)

 前回は、医者にまちがった薬を出されて、取り替えにいったら、料金を請求されて、頭に血がのぼったところまで書いた。

 しかしここで30分ほど待たされたおかげで、沸騰しかけていたわしの頭は、少し冷静になった。その頭で診察室へ入った。
 医者は黙ってわしの訴えを聞いていたが、話し終えると、やおら口を開いてこんなことを言った
「待合室に張り紙が出してあるのを、ご覧になりませんでしたか? 当院の診療を受けておられる方が、外から電話をかけてこられて、わたしが出てお話をしたら、再診療費をお受けすることになっております。これはどなたにもお願いしている当院の決まりです。これは医事関連法でも認められている、公認の診療報酬です」
 わしのカンシャク玉の皮が、なんとか耐えられたのはここまでだった。ついに爆発した。
「患者を愚弄にするのもいい加減にしろッ!」
 医者は、草むらから突然飛び出してきたヘビに驚いたチワワのような顔になった。そして数秒 間をおいてから言った。
「はばかりながらわたしは、患者さまをグローするようなことは、いままで一度だってしたことはありません。わたしがお願いしているのは、医事関連法でも認められている当然の・・・」
 わしは医者の言葉を途中でさえぎり、先ほどたっぷり待たされている間に考えておいた異議申し立てをいっきに口にした。
「そんなおかしな話が、他のどこで通用しますか。いいですか・・・例えばですよ、家電量販店でなにか電気製品を買ったとします。家に帰って梱包を開けたら、店頭で選んだものと品物が違っていた。そこで店に電話をしたら、持ってきたら取り替えると言われた。そうした場合、その家電量販店は、客に電話応答料を請求しますか!」
 医者は、困惑と苦笑を混ぜ合わせた狆(チン)のような顔になって答えた。
「医療の現場を、家電量販店と一緒にしてもらっては困るなァ」
「なにを言ってるんです。結局は同じじゃないですか。医療現場だって、医療サービスを行って、その代価として報酬を受け取っているわけでしょ。扱うものが家電製品か医療サービスかという違いだけで、根本は同じです」
「いや違います!」チン顔が、こんどは憤然としたチャウチャウ犬顔になった。「わたしたち医師は、金銭だけのために仕事をしているのではありません!」
「そうなんだ、そこなんだ!」わしはここぞと声に力を入れたよ。「まさにそこなんですよ、先生、私が言いたいのは・・・。人の命にかかわる仕事をしている、という美しげな看板の陰で、実際はこういうケチなことをあんたたちは平然とやっているんだ! わたしが患者をバカにしているというのは、そういうことを言ってるんです!」
 こうなったらもうわしの口は止まらない。腹の中にあることを一気にまくしたてた。このケースのように、たとえ小さな事柄であっても、医療従事者らしい目を配ることをせず、「外から掛けてきた電話に医師が出たら・・・」「公認の医療報酬で違法ではないから・・・」などといった建て前のもとに、弱い立場の患者に問答無用に費用を請求するというような状況・・・それこそまさに「金儲け主義医療」そのものではないか。さらに、そうした品のない小さな行為の積み重ねが、いま日本で大きな社会問題となっている「医療不信」、あるいは「医師不信」を生み出しているのではないか・・・。
 わしのケンマクに多少ビビッたのでしょう、まもなく医師は折れて、「今回は特別の例外措置」として、電話による再診料は支払わなくてよい、ということになったのだった。
 わしは家へ帰り道、勝利を手にした凱旋将軍の気分・・・ではなかった。じつはなんとなくサエない気分だった。ふと相手の医者の身になって考えてみたからだ。今ごろあの医者は、さぞかし不愉快な思いをしているだろうな、と。
(今日はツイテないナ、嫌な患者にぶつかってしまって・・・。ああいう連中が一番困るんだ、ああいう中途ハンパな知識を持っているヤカラが・・・。今は医院経営も大変で、こうした小さなことからも細かく金を取るようにしないと、なかなかやっていけないことなんて、あいつらには分かっちゃいなんだ。建て前を振りまわしているのは、あいつらのほうなんだ・・・)

 確かに、中途ハンパな知識と皮の破れやすいカンシャク玉をあわせ持っているわしのような患者は、医師にとってはうれしくない客だろう。

 でも、わしはふだんから思ってるんだ。医師に対して日本人は少しおとなし過ぎる・・・と。べつだんカンシャク玉をむやみに破裂させる必要はないけれど、患者として主張すべきはきちんと主張しなければならない、と考えているわけだ。演劇界でよく言われるらしいが、「舞台を良くするのもダメにするのも観客しだい」という言葉は、どの世界にも当てはまると思う。

 ・・・と、そんなことを思う頭の隅のほうで、別の声もしていたよ。近所の医者とこう軒並みケンカしてたんじゃ、イザというときに困るんじゃないの・・・って。

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爆発した玉(2)” に対して 4 件のコメントがあります

  1. むらさき より:

    半ボケじじいは間違っておりません!
    今なら、それは医療事故ですよ!
    ありえない医者です!
    電話の診療のお金のことは分かりませんが、薬の処方間違いはあってはならないことです!
    裁判したって、患者様の勝利です!
    だいたいねー、診察室の椅子!医者が肘掛付の立派な椅子で、患者様はただの丸椅子よ!
    あれだって、私しゃ納得いきませんからね!
    平成の医療従事者より!!!

    1. Hanboke-jiji より:

      記事(1)に書いたと思うが、これ、今から約20年ほど前の話じゃからね。
      今はこんなひどい医者はいないかも・・・。
      でも医師も人間だから、いろんな人がいて当然。仏様のような頭の
      下がる医師もいる反面・・・ね。
      これは医療界にかぎらずどこの世界でも同じだろうと思う。
      ・・・にしても現場の医療従事者さんからいちおうサポート系のコメントを
      もらって、わしもホッとしとるよ。

  2. Boots strap より:

    確かに、命の担保は取られているかもしれませんが、
    こんな理不尽なことを認めてはいけません。
    その請求には、健康保険から支払われる金額も入っている。
    こんな理不尽なことを、おカミが認めるわけがない。
    そこは、「お畏れながら」としかるべきところにご注進のほどが、
    宜しかろうと思う次第。
    医者は、その後、健康保険から睨まれ、
    いかなる請求をしているか? の「手入れ」が行われる。
    医師も健康保険から担保を取られている。
    命は命。不正に対する怒りは、その担保を取られたからと、
    弱気はご禁物。
    こちらも憤って来ましたぞ!
    わが心も、煮え繰り返ってきましたぞ!

    1. Hanboke-jiji より:

      Boots strapさんより強力な援護射撃。いやあ、心強いですなア。
      >「お畏れながら」としかるべきところにご注進のほうが、
        宜しかろうと思う次第。
      おっしゃる通りなのだが、なかなかそこまでするエネルギーがねえ。
      そういう患者の態度が、出来の悪い医者をつけあがらせ、
      のさばらせるんだと分かってはいても、なかなか腰が重くて上がらない。
      「芝居の舞台は観客がつくる」なんて言っておいて情けないですがね。

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