魔女の来賀(上)

          お知らせ
 私は満80歳の誕生日から、このブログを始めました。
 何を血迷ったか最初のうちは “毎日更新” でした。
 が、日を経ずして、それは老犬に馬車を引かせるようなものだと気づき、原則 “週2回” の更新に改めました。
 そしてほぼ4年半。老犬はさらに老い、お読みいただいてお気づきのように、いまや足腰が弱ってヨタヨタ歩きです。
 きっぱり辞めることも考えましたが、一度始めたことに自ら白旗を掲げるのもシャクです。せめて “週1回(原則)” の更新にしてでも、もう少し歩いてみることにしました。
 この未練がましい歩きがどこまで続くか、どこでいよいよ足や腰が立たなくなってクタバルか、面白半分に見物していただければ幸いです。
                   2022年1月7日

 魔女の一撃

 どうも今年は年の初めから、あまりめでたくないことが続くようだ。

 まだ松の内もとれないある朝、カミさんがとつぜん悲鳴をあげてしゃがみこんだ。
 腰に強烈な痛みが走って、ほとんど動けないという。
 えッ、それって、ぎっくり腰?
 正月早々、世にいう「魔女の一撃」ってヤツにやられたの?!

 ・・・に違いないと当人は言うのだが、それをそのま信じるには、ややためらいがあった。
 というのはカミさんは、”日めくりイタイイタイ病” とでも名づける以外にない持病を持っているからだ。

 以前にも触れたことがあるが、その名が示すとおり、朝起きたとき日によって違うところが痛む。
 ところが翌日になると、前日の痛みは跡形もなく消えて、かわりに別の部分に新たな痛みが生じている。はっきりいって「奇病」。
 もっとも考えてみれば、これはいかにもカミさんらしい病気ではある。もし病気ならばだけど・・・。
 
 だから、この日の朝彼女の腰を襲ったという「一撃」も、そのまま受け取るには用心が必要だった。次の日の朝にはうっちゃられて、こっちの腰が土俵の角に叩きつけられて痛む可能性なきにしもあらずだから・・・。
 
 ただし、もし本物の魔女の来襲だったら、やはり放っておくわけにはいかない。
 何はともあれ、まず整形外科医に診せるのが先決、ということになった。

 調べてみると、隣市にあるとある整形クリニックが、運よく今日から新年の診療を始めたという。

 だが、いま住んでる家はエレベーターのない小マンションの2階である。タクシーで行くにしても、まず外づけ階段を降りて、それからさらに道路まで2,3十メートルほど歩かねばならない。

 わしは健康とはいえ80代半ばの老骨である。お姫さま抱っこはもちろん、二宮尊徳ふうタキギ背負いもムリだ。ダッコもオンブもダメとなると、あとはもう痩せた片肌を脱ぐくらいしかできない。
 カミさんも肚を据えて、頼りなげなわが老肩にすがり、顔じゅうの筋肉を真ん中に寄せながら、そろりそろりと足を運んで、なんとか階段を降り道路まで出た。
 
 ところが呼んだタクシーがなかなか来ない。寒風が骨にしみる。

 するとカミさんが言い出した。意を決して歩いてみたら案外歩ける。
 いつも診てもらっている掛かりつけ医なら、ここから歩いて数分で行ける。まず掛かりつけ医に相談したい。そこまでなら何とか歩いていけけそうだ、と。
 わしはスマホを取りだし、タクシーをキャンセルした。いま出ようとしていたところだと言っていたが・・・。
 
 それから、二本の枯れ木がもつれ合うようにして歩いた。
 老人でもふつうの足ならたしかに数分だろう。だが魔女のムチで腰を叩かれながらじゃ、同じにはいかない。

 感心したのは、その間カミさんは歯を食いしばりながら、その歯のあいだから弱音を出さなかったことだ。おそらく私ならソートー回数泣き言を口にしたにちがいない。

 いざとなると女は強い。・・・とよく聞くがホントだ。

 その掛かりつけ医の建物は、歩いてきた道路からさらに10メートルほど奥まったところにあった。
 そのアプローチへ入って玄関の方へ目をやったとき、嫌な予感がした。
 入り口前が妙にしんとしていたからである。

 昨年12月17日のブログに書いたのと同じ。このクリニック、きょうは休診じゃないか? という予感。・・・・
 
 カミさんの腰を通してわが家にやってきた魔女の来賀は、このあとまだ続くのだが、すでに長くなったので続きは次回で。

  (昨年12月17日のブログ『ツイてない日』はこちらから)

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