絶望名言

絶望

 世間ではふつう、前向きの言葉、ポジティブな言葉が好まれる。
 つい先日も新聞に、80歳を超えてなお元気に歌手活動を続けているシンガーソングライターの加藤登紀子さんの、こんな言葉が載っていた。
 
 「しなる、たわむ、じれる・・・・
  木や草が持つ、こんな強さを心に持とう。
  心がこわばってくると、すぐ切れる、壊れる、破綻するから・・・」
  
 そりゃまあ確かに、マイナス的、否定的、悲観的言葉を聞かされるより、   前向きな言葉を耳にする方が気分がいい。元気も出る。
 わしもずっとマイナス的な言葉は避けていた。
 しかしそれは80歳を超えて脳梗塞をやるまでだった。とりわけその2年後に、首の骨を折って、尻の骨を取ってきて代用するまでだった。

 最近は、元気の良い言葉に、かつてほど励まされなくなった。
 ・・・というか、なんとなくうすら寒いすき間風に首筋をなでられるような、違和感を覚える。首の骨に尻の骨を継ぎ足したせいだけじゃない。

 そんなとき(先月27日)NHKのこんな番組に目が留まった。
 タイトルは「『絶望名言』を探して」。
 たまたま予告編をやっているのを見て、放送時間が深夜の0時だったにもかかわらず、がんばって寝ないで見た。
 予感通り、なんとなく今の自分の心にしっくりくるものがあった。
 
 もともとは「NHKのラジオ深夜便」で放送されて人気だったらしい。
 それを基にした本も出ていて、近くの図書館にあったので、早速借りてきて読んでみた。
 たとえばこんな言葉が並んでいた。
 
「歳と共に誰もが子供に帰ってゆくと
 人は言うけれど それは多分嘘だ
 思い通りにとべない心と 動かぬ手足
 抱きしめて 燃え残る夢たち」(さだまさし)
 
「生きている事。
 ああ、それは、何というやりきれない
 息もたえだえの大事業であろうか。」(太宰治)
 
「どうせ生きているからには、
 苦しいのは
 あたり前だと思え。」(芥川龍之介)
 
「涙とともにパンを食べたことのない者には、人生の本当の味は分からない」  (ゲーテ)

 聞けば誰でも知っている著名なエライ人たちが吐いたこうした言葉が、前向きでポジティブな言葉より胸にひびいてくる。

 そんな中で、わしにとって一番しっくりきたのは、次の言葉だった。
 
「将来にむかって歩くことは、
 ぼくには(もう)できません。将来にむかって
 つまずくこと、これはできます。
 いちばんうまくできるのは、
 倒れたままでいることです。」(フランツ・カフカ)
 

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絶望名言” に対して 2 件のコメントがあります

  1. 色呆け爺 より:

    前回の「老いの不様」今回の「絶望名言」共にコメントのし様がありません。
    身につまされるお話です。
    私も早速、神戸の図書館を調べますとありました。
    それも二冊も、
    とりあえず一冊、予約申し込みしました。

    1. Hanboke-jiji より:

      色呆け爺様
      ここのところ体が気だるくて、気持ちが沈みがちなものですから、
      ついネガティブなブログになってしまいました。
      でもいういうマイナス的な気分でいますと、 日々の生活が
      しんどいですので、なんとかしたいと思っているのですが・・・。
      そういうときこういう反応(コメント)を頂きますと、元気が出ます。
      ありがとうございました。(半ボケじじィ)

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