遺伝子って何だ?

つい先日のことである。
いつものように運動がてらの買い物に出かけたとき、隣を歩いているはずのカミさんの姿が急に見えなくなった。
あわててふり返ると、少し後ろの道端で花を覗き込んでいる老女がいて、思わずドキッとした。
6年前に亡くなったカミさんの母親のユー霊が、そこにいたからである。
ま、当方もそろそろ幽霊に近い存在になっていて、いつあの世に行って彼らの仲間に入ってもおかしくはない。
・・・とはいっても、実際に幽霊さんと親しく付き合えるまでには、まだ至っていない。
カミさんの母親の幽霊と思ったのは、もちろん、生身のカミさんだった。
人間は年を取ると親に似てくる、とはよく耳にする。
今書いた通り、カミさんも近ごろ母親そっくりになってきた。
そう言うと本人はイヤがる。どこが似ているの? 少しも似てないじゃない・・・と言って抗議するが、いま述べた例のように、ちょっとした小さなしぐさや、なにげない佇まいが驚くほど母親に似てきた。
わしの父親は若死にして、今から64年も前に死んでいる。だからわしが父親に似てきたかどうかはよく判らない。
しかし兄や弟とは似ているとよく言われる。声だけの電話では、間違われることが多い。自分ではそんなに似ているとは思えないのだが・・・。
生物学的には、これらの現象はいわゆる遺伝子の働きによるものと言われる。
わしはいつも思うのだが、遺伝子の問題に考えが及ぶと、肉眼には見えない小さなDNAというものの存在が、実に不思議なものに思えてならない。
象の子供が象に、ゴキブリの子供がゴキブリに生まれてくるのはなぜか。
そんなことは当たり前だ、と思わずになぜ当たり前なのか・・・と考えると、実に不思議に思えてくる。
生後70年80年も経ってから、人間の親子が思わず間違えるほど似てくるなんてのも、遺伝子の働きの結果であり、そこに至る由来や経緯の複雑さと考えると気が遠くなる。
先ごろNHKの特別番組で、タレントのタモリとノーベル賞受賞学者の山中伸弥氏が、人間の体の成りたちや働きについて、最新の知識・情報を語っていた。
細やかなCG動画などを使って、一般視聴者にも解りやすく作ろうと努力していたが、わしなど一般視聴者の範疇からはみ出してきた人間には、解かったようでよく解からなかった。
それでも人間の体の複雑・精緻さが、どれだけ奥深く複雑・巨大で、まさに気が遠くなるものであるかはよく解かった。
90年近く人間をやってきて、いちばん印象に深く残っている知見といえばそのことだ。
つまり自分たち人間の体の複雑精緻さ、巧妙巧緻さである。
そして、そこに働いている “神の手の存在” だ。
若い頃はコチコチの唯物主義者で、科学で説明できないことには見向きもしなかったわしが、人間を含めたこの世のあちこちに“神の手の存在”を意識せざるをえなくなっている。
・・・なんてことを書くと、おまえはソートー単純で雑な人間なんだな、と言われそうだが・・・。
当ブログは週1回の更新(金曜)を原則にしております。いつなんどきすってんコロリンと転んで、あの世へ引っ越しすることになるかもわかりませんけど、ま、それまではね。