おじいさん と おばあさん -おばあさんの勝ち-
老人福祉に関わっている人の話によると、どの施設でもおばあさんが圧倒的に多いという。
つまり長生きしているのはおじいさんよりおばあさんの方ということ。
しかも、おじいさんよりおばあさんの方が、だんぜん元気だそうだ。
しゃべるのも、食べるのも、遊ぶのも、ネ。
反対におじいさんはどことなく不元気だ。
わしの周辺を見まわしても、おじいさんは何となくショボショボしている。で、すぐ病気になるわ、病院に入ったらそのまま帰ってこないわで、トーゼン長生きははおばあさんが多くなる。
だったら、
「男は年のとり方を女に見習えばいい」
と言った男がいた。去年亡くなった永六輔。
永は彼の著書『男のおばあさん』(大和書房刊)に書いている。
「年をとったら、男も女性化すればいい、女になればいい」と。
永六輔は、晩年はラジオで口仕事をする人だったから、口先だけの話だと思っていたら、驚いたことに彼は本当に、
「私、おじいさんをやめます」
と宣言して、女性ホルモンの注射を始めたという。
「男性的な機能がなくなりますけど、それでいいですね」
と医者に念押しされたがひるまなかった。そして毎月、女性ホルモンを注射したという。
すると、「自分で見ていても、だんだんおばあさんになってきた」と、自著に書いている。
彼によれば、おばあさんになると何かにつけて楽(ラク)だそうだ。
「男だから」と空元気を出す必要もないし、「男のコケンにかかわる」とへんに頑張ったり気ばったりする必要もない。
自然のまま、あるがままでいられる、というのはこんなに楽なんだ、目からウロコだった、と永は書いている。
男を弱くし、短命にしている原因はここに関連するかも・・・とも。
「男だから」とか「男のコケン」とかを男が言うのは、かつて「女は(男に比べて)弱い存在」だという社会認識が一般的だったころの残りかすだろう。
今でもそんなことを言ってるヤツは、ソートーにとろい御仁にちがいない。
というわけで、男女の強弱はいまや逆転しているのに、なおかつそんな “残りかす” に引きずられて、わざわざしんどい思いをしている男というのは、コッケイ以外のなにものでもないとわしも思う。
それは分かっている。だが医者に、
「男性機能がなくなりますけど、ホントにいいですね」
と念押しされたら、わしは何となくビビリそうな気がする。
そういう意味ではまだまだ修行が足りない。
かといって、この年になって新たに修行するのもしんどいし・・・。
ダメだ、こりゃ。