カリフラワーと魔法のランプ

魔法のランプ

 いま世界中で最ももて囃されている・・・というか問題になり話題になっているのは、「生成AI」であろう。

 言わずと知れた超高機能な人工知能である。
 ふつの言葉で質問すれば、およそどんなことでもすぐ答えてくれるという。ま、現代の「魔法のランプ」みたいなものか。

 卒論や学位論文の執筆に役立てる学生もいれば、小説や漫画の制作、絵画や音楽の創作にも利用できるらしい。

 ・・・というから、いったいどうなっちゃってるの? ・・・というか、こんなものが出来ちゃって、これからの世界はどうなっていくんだろう?
 ・・・というのが正直なわしの感想でアリマス。

 ・・・と言いながら、この訳の分からない現代のモンスターを、わしは頭から拒否しているわけではアリマセン。実を言うとちゃっかり活用させてもらってマス。

 話はちがうが、わしは最近とみに「ド忘れ」が多くなった。
 言いたいことの名前がとつぜん出てこなくなる。つい数分前には普通に口から出ていたのに、断りもなくひょいとどっかへ行っちゃう。・・・となると、もはや簡単に顔を戻してくれない。
 それでいてしばらく時間をおくと、またふいに、シレッと出てくる。人間様をおちょくっているとしか思えない。じつにハラが立つ。

 この、とつぜん頭からトンズラする言葉は、種類やレベルの高低を選ばない。
 たとえば、「カーボンニュートラル」といった専門づらをしたいかめしげな言葉も、「ユニクロ」といった世にあふれている店の名前も、「カリフラワー」といったふだん口にする食べ物の名も、まったく同じように、なにかの拍子に突然どっかに消えてしまう。となるとなかなか戻ってこない。むしろ思い出そうとして努力すればするほど、引っ込んじゃう。ほんとにシャクにさわる。

 シャクにさわるだけならまあいいとしても、その言葉を本当に必要とするときは困る。
 隠れ家から引っぱり出す手だてとなるものが、どこにもないからだ。
 最大の助けとなるべき辞書も、基になるコトバ自体が雲隠れしているのだから、電池の切れた懐中電灯を灯そうとするのに等しい。

 そういう時にお役に立って頂くのが、じつはわしの場合「生成AI」様である。

 たとえば「カリフラワー」という言葉が出てこないときには、生成AIのアプリを開いて、「ブロッコリーとそっくりだが、色が緑でなく白い野菜の名前を忘れました。教えてください」と質問すると、たちまち(ほんの数秒で)次のような回答が表示される。

「ブロッコリーに似ていて色が白い野菜は、カリフラワーです。カリフラワーは、ブロッコリーと同様に花蕾(つぼみ部分)と茎が食べられます。ブロッコリーが濃い緑色をしているのに対し、カリフラワーは真っ白な色をしています。また、ブロッコリーとカリフラワーは同じアブラナ科に属しています。どちらも栄養価が高く、様々な料理に利用されます。お忘れにならないように、どうぞ。」

 ・・・てなぐあい。

 「あ、そうだ、カリフラワーだった・・・クソッ、なんでこんなもんが出てこないんだ!」
 と自分に毒づきながらホッとする。
 わしにはそれで十分なのだが、生成AIは至れり尽くせりだ。さらに詳しい情報を知りたい人のために、役に立つリンクまで用意され、添付される。
 「カリフラワーの栄養価は何ですか?」
 「どんな料理に使えますか?」
 「ブロッコリーとカリフラワーを比較してください。」
 ・・・などなど。

 あるいは、「カーボンニュートラルとは何ですか? 素人にも分かるように説明してください」と質問すると、やはり数秒で次のような回答が出てくる。

 「カーボンニュートラルとは、温室効果ガス(主に二酸化炭素やメタン、窒素酸化物など)の排出量が実質ゼロである状態を指します。
 この「実質ゼロ」というのは、人間の活動を止めて排出量を完全にゼロにすることではなく、排出した温室効果ガスと同じ量を吸収することによって、実質ゼロを目指します。
 具体的には、以下のような取り組みが考えられます:例えば・・・。
 (メンドーだから、以下略)」

 ・・・まあこんな具合。

 つまりわしが現代の魔法のランプ「生成AI」を活用するというのは、実は、半ボケによって「ド忘れ」たコトバをただ思い出すのに、ま、ひそかに使わせてもらっているというのが実態でアリマス。

 オソマツサマでございました。

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